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無印もシュプリームも……ファッションにおける「パクリ」はなぜなくならないのか

権利を守ることはクールじゃない?

2019/02/17
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本家が敗訴し波紋が広がった「無印良品」

 ここ数年、中国におけるパクリ商標がたびたび話題となっているが、ひときわショッキングだったのが、無印良品が中国のパクリ店舗「無印良品Natural Mill」から提訴され敗訴したというニュースだ。

上海の「無印良品」旗艦店 ©Getty Images

 無印良品を展開する良品計画が発表したところによると良品計画は、2005年に「無印良品」の中国1号店をオープンして以来、中国における商標のほとんどを登録してきた。ところが、ベッドカバーやタオルなど一部の商品カテゴリについては、すでに別の会社が商標登録していたのだという。

 今回の裁判は、無印良品が、別会社がすでに商標登録しているカテゴリに属する商品に「無印良品」の商標を使用したため、別会社から損害賠償を求められたもの。第一審で別会社の主張を一部認容する判決が下されたことが、今回の報道につながったようだ。なお、無印良品側はすぐに控訴し、現在第二審が係属中だという。

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無印良品は中国国内で「影響力があるとはいえない」?

 この無印良品のように、本家が中国に進出したときにはすでに、本家とは縁もゆかりもない企業によって商標登録されている「抜け駆け商標」は珍しくない。こうした事態が起きるのは、中国の商標法システムに原因があるようだ。

 中国の商標法は、他人が先に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で抜け駆け登録することを禁止している(中国商標法32条、JETRO訳)。ただし、「一定の影響力のある」というのがクセモノで、あくまで“中国国内で”影響力があることが必要。実は、良品計画は、別会社が保有する商標の取消を求めて長い間争ってきたが、2012年、中国の最高裁(最高人民法院)は、無印良品は中国国内では知名度がなく、影響力があるとはいえないとして、良品計画側の上告を退けている。

 今回のケースもこれを前提としていることは明らかだ。本家がパクリに負けるという衝撃的な事件は、中国展開を視野に入れる多くの企業にとって、商標戦略の大切さを再認識させるきっかけとなったに違いない。

“偽シュプリーム”とコラボしてしまったサムスン

 中国つながりで記憶に新しいのが、昨年末に世間を騒がせた、韓国企業「サムスン」と偽ファッションブランドとのコラボ事件。

©Getty Images

 昨年の12月10日、サムスンは、中国で開催した新型スマートフォン「Galaxy A8s」のプレゼンテーションにおいて、ニューヨーク発のファッションブランド「シュプリーム」とコラボレーションすると発表した。シュプリームは同社の公式インスタグラムで「シュプリームがサムスンと協業したり、北京に旗艦店をオープンしたり、メルセデスベンツのランウェイショーに参加することはない。これらの情報はすべて明らかに虚偽であり、偽の組織により流されたものだ」とこれを真っ向から否定(ストーリーズのため現在は見ることができない)。これを受け、サムスンは、同社の公式SNSアカウントを通じて謝罪し、提携を再検討すると発表したのである。

 実は、サムスンが提携を発表したのは、ニューヨークの本家シュプリームではなく、本家とは縁もゆかりもない「シュプリーム イタリア」というブランド。このシュプリーム イタリアとは、本家シュプリームのロゴや商品をそっくりそのまま真似したフェイクブランドで、インターナショナル ブランド ファーム社(以下IBF社)という英国企業が保有している。