エンゼルスの主砲・トラウトも補償1巡目指名だった
大リーグのFA制度は2012年、2016年と改正を重ね、現在ではFAがらみでドラフト1巡目を失うことはなくなった。それでも近年、各球団はFA選手獲得に消極的だ。スポーツ・イラストレーテッド誌のジョン・テイラー記者は「FA補償はドラフトに結び付けられるべきでない。FA市場を低迷させるだけ」と主張する。
ドラフト指名権の譲渡がチームの運命を変えた例がある。大谷翔平が所属するエンゼルスの主砲でMVP2度のトラウトは、2009年にヤンキースから譲り受けた1巡目(FA選手はテシェイラ)の指名だった。2017年に新人記録の52本塁打を放ったヤンキースのジャッジは、2013年にインディアンスから譲渡された1巡目(FA選手はスウィシャー)で指名された。
これだけでも各球団がFA選手獲得に慎重になるのが理解できる。
「金欠球団」のイメージは過去の話
さて巨人の話だ。プロテクト枠から長野、内海を外した以上、相手球団に取られる可能性は当然考えていただろう。ただし、少なくとも長野に関しては、積極的に放出する意図はなかったのではないか。巨人は広島に獲得可能選手の名簿を送付した後の昨年12月21日、長野と3千万円増の年俸2億2千万円(推定)で来季契約を交わしている。獲得しにくいよう、年俸アップで念を入れたとも取れる。
多くの野球ファンに驚きがあったとしたら、それは広島が資金を持っており、使う用意もあったということだ。
広島は資金不足に悩まされた時代から、それを決して隠そうとはせず、むしろ市民の募金など周囲のサポートによって乗り越えてきた。
プロ野球が入場者数を実数で発表し始めたのは2005年だ。2004年までの数字は概算というか、端的に言えばウソだった。だから実数発表を始めた2005年、例年370万人以上の発表だった巨人が292万人にダウンするなど、11球団の入場者数が前年から減少した。唯一アップしたのが広島だった。他球団が見栄を張り合っていた中で、広島は実情をさらしていたのだ。それがプラスになると感じていたのだろう。狙い通り(?)金欠球団のイメージは世間に浸透している。
だが現状は違う。広島の入場者数は実数発表開始時の倍以上になり、昨季まで4年連続で200万人を超えている。2009年に開場したマツダスタジアムは、野球専用のいわゆる「ボールパーク」だ。松田元オーナーは米国での調査を重ね、開放的なマイナーの3Aの球場を参考にしたと共同通信に述べている。都市の規模に合い、かつ最新の設備を持つ球場は、入場者増の大きな要因となっている。