5億円で1000人のクリエイターを育成
もう一つ、TikTokは新たな試みに挑んでいる。それがクリエイター向けの収益プログラムだ。現在、TikTokに流れる広告はクライアントが制作した動画が掲載されているが、今後はクライアントの依頼を受けて有力クリエイターが動画を制作するというタイアッププログラムの導入が予定されている。収益プログラムによって、人気クリエイターがTikTokに集まるエコシステムの形成を狙っている。
さらに有力クリエイターを育成するべく、TikTokは予算5億円を投じる育成プログラムを発表している。YouTuberプロダクションのUUUM社と提携。ファッション、コスメ、グルメ、ゲーム、旅行、二次元など20のカテゴリーで、1万人以上のフォロワーを持つクリエイター1000人を育成していくという。5億円の予算はクリエイターの育成、サポート、ブランディングなどに用いられる。
中国ではTikTok経由で日本の製品が売れている
中国ではTikTokはすでに広告プラットフォームとして大きな影響力を持つ。筆者は日本商品を中国に売り込む越境EC(電子商取引)の取材も手がけているが、この1年よく目にするのが「抖音爆款」(抖音の人気商品)という触れ込みだ。中国で売れる日本商品には、中国版TikTokで人気に火が着いた商品も少なくないという。さらにこの1月から始まったのがレストランとの提携だ。レストランがアップした動画に住所や割引券へのリンクが張れるという機能だ。レストランは動画映えする料理やあるいは店員のダンスといった映像によって客を集めるという仕組みになっている。
人を呼ぶには踊れる店員が必要とは驚くべき未来だが、思えばInstagramの普及によってアパレル店員はオシャレ写真の撮影が必須スキルとなっている。もしTikTokが日本社会に定着したならば……外食店員は今からダンスの練習を始めるべきかもしれない。
着々と成長への道を歩むTikTokだが、果たして流行り物から脱してフェイスブックやツイッターのような定番SNSの座をつかむことができるのだろうか。その可能性を評価する投資家は多い。バイトダンスは昨秋の資金調達で、750億ドルという高い評価額を得た。決済サービス「アリペイ」を運営するアントフィナンシャル社に続き、世界第2位のユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)の座を得た。ソフトバンクグループもバイトダンスに出資。あの孫正義もTikTokの成功に賭けている。