「撮影技術」がなくても楽しめる
次に「撮る」だが、音楽に合わせて動き特殊効果をつけると、たいした動きをしなくとも、それっぽい動画が撮れるという仕組みになっている。また「チャレンジ」という定型の動きで投稿するフォーマットもあるが、右左のこぶしをつきあげるだけの「め組のひと」チャレンジ、カメラに向かって走って近づき、手のひらにアゴを乗せるだけの「いいアゴ乗ってんね」など、簡単な動きで撮影できる仕組みになっている。撮影の技術やセンスがなくとも、誰でも動画の撮影、共有を楽しめるという工夫だ。
もっとも動画を撮りやすい仕組みがあるとはいえ、人気クリエイターになるためには相応のセンスと努力が必要なようだ。ダンスなどの動画で30万フォロワーを獲得した南部桃伽さんに話を聞くと、15秒の動画を撮影するのに必要な時間はなんと4時間! 撮影地までの移動や、天候にあわせて撮影内容を変更するといった工夫を考えると、必要な時間はそれ以上だという。ペット動画で130万フォロワーを集めた柴犬コマリさんは週4本の15秒動画を撮影しているが、「平日5日間は準備にあてて、土日で撮影します」とのこと。計1分間の動画撮影にまるまる1週間がかかっているという。
一般人でも1万人以上のフォロワーを獲得できる仕組み
そして「広がる」。「他のSNSと違うのは拡散力が違うことですね。いい動画ならすごい勢いで広がってフォロワーが増える。インスタ(Instagram)とかすごいがんばってもなかなか増えないんですけど」と話すのはしなこさん。「ガーリー×カラフル」をテーマとしたポップなファッションでTikTok動画を撮影。小学生など低年齢層のファンを中心に40万人ものフォロワーを集めている。
なぜTikTokは拡散しやすいのか。「見る」でも説明したAIリコメンデーションによって良質の動画だと判断された場合、フォロワー数の少ない、無名の一般ユーザーの動画であっても、多くの人の目に触れるようプッシュされるという。その動画に興味を持った人がフォローすることで、その一般ユーザーが一気にフォロワー数を増やすこともままあるという。西田副社長によると、フォロワー数1万人以上のユーザーのうち、芸能人やインフルエンサー以外の一般人が占める比率は70%に達しているという。他のサービスでは良いコンテンツを作り“続け”ないとなかなかフォロワー数が伸びないが、TikTokでは一発のヒットで一気に人気を獲得しやすい構造がある。