現在沖縄で行われている横浜DeNAベイスターズキャンプに2人のオーストラリア人が参加しているのをご存知だろうか?

 なんてことをベイファンに言うと怒られてしまうだろう。キャンプ、それも宜野湾ではなく、嘉手納で行われている2軍キャンプにまで足を運ぶ熱心なファンは、すでに彼らの名前も知っていて、サブグラウンドの陸上競技上でフィールディング練習に四苦八苦している2人の名をささやきあっている。

沖縄に現れたオージーたち

「グッド・プラクティスだね。オーストラリアではあんなのやらないからね。よく試合でも、暴投しているよ」

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 と、日本野球の洗練されたフィールディングに舌を巻くのは、スティーブ・ケント、29歳だ。彼は、この冬のオーストラリアウィンターリーグ・ABLで7勝を挙げ最多勝に輝いたオーストラリアを代表するピッチャーだ。実績は十分で、アトランタ・ブレーブスのマイナーに在籍した経験をもつ。2016年オフにはメジャーリーガーも参加するベネズエラのウィンターリーグでもプレーしている。

 これまでナショナルチームの一員として3度の来日経験があり、侍ジャパンともテストマッチで日本と対戦したことはあるが、実際に中に入ってプレーするのは初めてである。

オーストラリアウィンターリーグ・ABLで7勝を挙げ最多勝に輝いたスティーブ・ケント

 そしてもうひとり、転がっていったボールを拾いにいったり、用具片づけを手伝ったりして「いい人ぶり」を発揮しているのが、スティーブン・チェンバース、28歳。この冬は不振だったが、3年前はABLのシーズン記録となる8勝挙げている。彼は日本での経験豊富で、3つの独立リーグで計4シーズンプレーしている。

 2人はこの冬のシーズン、防御率0.51と断トツの成績を残した今永とともに所属チーム、キャンベラ・キャバルリーの先発ローテーションを担っていた。

「とにかくエンジョイできているよ。町はきれいだし、人も親切。食べ物もおいしいんで言うことはないね」

 初めての日本のプロ野球キャンプにふたりは満足のようだった。

「いい人ぶり」を発揮しているスティーブン・チェンバース

オージーたちが語る日本野球

 侍ジャパンとの対戦経験豊富なケントは、日本野球の印象をこう語る。

「きちんとした野球をするね。細かい野球をするってよく言われているけど、代表レベルではパワーもあるよ」

 ナショナルチームの一員として、マウンドに立った経験もある彼は、のどかなオーストラリアのスタンドとの違いにも驚かされたそうだ。

「4万人もスタンドにいることはオーストラリアではありえないからね。その大勢のファンが侍ジャパンを応援するんだから、スタジアムの雰囲気にはいつも圧倒されるよ」

 と、晴れ舞台に立った経験に目を輝かせる。

 現在はまだキャンプ、それも二軍とあって嘉手納の練習球場の風景はオーストラリア同様のどかなものであるが、取材前日の休日には一軍の練習試合を見学に行ったという。そこでの印象は、また違ったもののようだった。

「オフの日に一軍の練習試合を見学したんだけど、鳴り物もないし、スタンドにはアメリカ人の姿もあって、なんだかアメリカやオーストラリアの球場の雰囲気に似ていたよね」

 というのはチェンバース。独立リーグで日本の野球は体験しているものの、NPBは独立リーグとは全く違うと、そのレベルの高さに毎日驚かされていると言う。

 それでも、ベイスターズはやりやすいチームだとふたりは口をそろえる。

「多文化なチームだね。監督も外国人だし、選手にもアメリカ人やドミニカ人がいるしね。キャンベラで一緒だった、今永、国吉、三上、青柳の4人も良くしてくれるよ。ピッチャーの3人は一軍にいるけど、青柳はこっちだからいろいろ世話を焼いてくれるんだ。ピッチングコーチの大家さんも英語ができるし、チェンバースは日本語もできるからコミュニケーションは問題ないよ」

日本野球の印象を語る二人