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小手指の地名の由来にヤマトタケル伝説が……
調べてみると、歴史をぐっと遡れば小手指はかなり重要な地域だったようだ。中世には鎌倉街道の交通の要衝で、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけてたびたび戦乱の舞台にもなっている。もっと遡って神話時代になると、東征してきた日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が小手指の北野天神社で戦勝祈願をして篭手(こて)をかざした……などという伝説も。これが「小手指」という地名の由来になっているそうだ(他にも、「さし」は焼畑に由来し、原野を開墾した地域だから、といった説もあるそうです)。
いずれにしても、こうした由緒たっぷりの地名を持っていたことで、真新しいベッドタウンにして“〇〇ヶ丘”などという名付けを免れたのであろう小手指の町。国木田独歩の『武蔵野』の冒頭に小手指ヶ原古戦場の描写があるくらいだし、1915年に開業したお隣の西所沢駅が、約5カ月間「小手指駅」と名乗っていたことからもそうした地名への矜持のようなものが感じられる。
歴史由緒たっぷりの伝説を持つ地に鉄道が通り、遅れてできた車両基地と駅のまわりに生まれたベッドタウン。それを整備したのはもちろん西武鉄道のグループだった。東京都心から約40分の旅で足を運べる小手指は、意外と発見の多い町だった。ただ、惜しむらくは“日本武尊”の気配は駅の周りではついぞ見つけられなかったこと。もちろん、駅の周りにわざわざ訪れるほどの観光スポットなどはアリマセン。住みやすいとは思うんだけど……。
写真=鼠入昌史