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冬の定番ムートンブーツ。そのコワ~い落とし穴とは。

目からウロコの靴選び 1

 35歳を過ぎると、靴選びが変わる――。シニア世代に限らず、健康面に配慮した靴選びは、もはや常識といえよう。気になるポイントは、長く歩いても疲れないこと。履いたときにラクチンなこと。外反母趾などの痛みから、「今まで目もくれなかった“健康シューズ”売り場を覗いてしまった」という人もいるだろう。

 だが、この健康シューズ・ブームには、意外な「落とし穴」がある。わたし自身、その穴にはまってしまったひとりだ。そこで、足の専門医や理学療法士を訪ね、靴選びを根本から見直して……。そこで得た知識と経験をもとにまとめたのが、『健康長寿は靴で決まる』(文春新書)である。

 たとえば、今や冬の定番となったモコモコのムートンブーツ。「やわらかくて履きやすいし、抜群にあったかい。冬はこればっかり履いている」という人も多いはず。トレンドに敏感な若い世代だけでなく、足先の冷えに悩むアラフォー、アラフィフ女性に大人気なのも当然のこと。なかには、「オフィスの冷房病対策で、夏場でもムートンブーツを愛用している」なんて女性もいるほどだ。

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ムートンブーツの多くは「足にいい靴」とは言えない

 ムートンブーツが温かいことは間違いない。だが、足の健康という面では大きな疑問符がつく。靴の本来の機能は「足や身体を支え、足を守り、歩行をサポートする」こと。つまり、ほんとうの意味で履きやすい靴とは、「足をしっかりと支えてくれるため、長い距離を歩いても身体が疲れない靴」なのだ。そう考えると、市場に出回っているムートンブーツの多くが、この定義に当てはまらないと思われる。

 なぜなら、靴全体がソフトな素材でつくられているムートンブーツは、一般的に、かかとの部分もフニャフニャである。そういう靴で歩くと、かかとの関節をしっかりと支えられず、1歩踏み出すたびに足首がグラグラする。やわらかい長靴を履いて歩いたときの、何とも頼りない、あの感覚を思い浮かべてほしい。程度の差こそあれ、ムートンブーツで歩くときも同じようなことが起こっているわけで、それが足ばかりか全身の骨格に悪影響を与えてしまうのだ。

ムートンブーツによる足のゆがみの例

 じつは、かかと部分が頑丈で型崩れしないことは「いい靴」の必須条件。靴の専門家に言わせれば、「かかとは靴の命」なのだ。ムートンブーツであっても、かかと部分にヒールカウンターと呼ばれる硬い芯材が入っているものなら安心だが、そうでない靴は注意が必要だということ。『健康長寿は靴で決まる』で取材をした専門家の方々も、ソフトなかかとの靴にこぞって警鐘を鳴らしていた。「かかとが硬いと足が痛くなりそう……」というのは消費者の単なる思い込みにすぎないのだ。