池上彰さんの連載「WEB 悪魔の辞典」では、政治や時事問題に関する用語を池上さん流の鋭い風刺を交えて解説します!

悪夢のような民主党政権・あくむのようなみんしゅとうせいけん】

 自分たちにとって「悪夢」になったことを他人のせいにする安倍首相流のレトリック。

【池上さんの解説】

 2月10日の自民党大会で、安倍晋三首相(自民党総裁)は、2007年の参議院選挙での敗北に触れる中で、「悪夢のような民主党政権が誕生した。あの時代に戻すわけにはいかない」と演説しました。

 この発言について、12日の衆議院予算委員会で、当時の民主党政権で外務大臣を務めた岡田克也氏が「頭から相手を全否定したようなレッテル貼りはやめろと言っている」と、発言の撤回を求めました。

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 安倍首相は発言撤回を拒否し、「少なくともバラ色の民主党政権でなかったことは事実だろう」と答えました。

安倍晋三首相 ©getty

 さて、これは論理的なやりとりになっているのでしょうか。

「悪夢のような」と「少なくともバラ色ではなかった」はイコールではありません。「バラ色ではなかった」ということは、「とても素晴らしいとは言えない」という意味でしかなく、「悪夢のような」という強い否定にはなっていないからです。

 逆に言えば、「いまの自民党政権はバラ色です」と言っているに等しいのです。これは、なかなか傲慢ですね。

 ご自分の答弁が、論理的にはどんなことを意味するのか、論理の勉強をされた方がいいのではないか。

 ただ、民主党政権が安倍首相をはじめとする自民党にとって「悪夢」であったことは事実でしょうね。政権を失って失意のどん底にいたのですから。

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