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「歯周病」を発見するチェック項目

――歯周病もまた本人が自覚しにくい病気ですよね?

清水 すぐに痛みが出る虫歯と違って、歯周病は本人が気づきにくい「サイレント・ディジーズ」です。歯がポロッと抜け落ちてはじめて、さすがにおかしいと思って受診しにきた、という患者さんもいました。個人差はありますが、それほどまでに自覚症状に乏しい病気です。本に詳しく書きましたが、「目覚めたとき、口の中がネバネバする」「ブラッシングすると出血する」「歯ぐきに違和感がある」といったチェック項目をよく確認して、早めに発見して治療を開始する必要があります。

欧米では口腔ケアはマナーに。『プリティ・ウーマン』のワンシーン

清水 欧米だとビジネスパーソンのマナーとして日頃から口腔ケアをきちんとする、という文化が根付いており、とくに北欧諸国は歯の予防医学にも力を入れています。例が少し古いかもしれませんが、象徴的なのが映画『プリティ・ウーマン』(90年)のワンシーン。コールガール役のジュリア・ロバーツが部屋でデンタルフロスをするんですね。「ドラッグはダメだ」って実業家のリチャード・ギアが止めたら、彼女が持っていたのは薬じゃなくてフロスだった(笑)。マナーとして日常的なブラッシングに気を使っていることを示す印象的な場面でした。邦画や国内ドラマでデンタルフロスや歯間ブラシを使っているシーンはなかなか思いつきませんよね。日本では口腔ケア・予防医学にたいする意識が周回遅れになっている状況は否めません。

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――どうしてそうなってしまったのでしょうか。

歯医者の思い込みが大きな問題

清水 「予防」に保険点数がつかない保険制度の問題が大きいのですが、私はそれ以上に、日本では「歯周病は治らない」「加齢とともに進行するからうまく付き合っていくしかない」と思っている歯医者がいまだ多いことに大きな問題があると思っています。これだけ医療の進んだ先進国で、たとえば歯周病のセミナーや講習会のような場で、ドクターから「歯周病って治せるのでしょうか?」という質問が出たりするわけです。エビデンスに基づいた治療をすれば歯周病は必ず治せる病気だということが何十年も前にもう証明されているのに。

©釜谷洋史/文藝春秋

――歯周病は歯科に通ってもなかなか良くならない、治療期間が長いというイメージもあります。