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普段見る動物と違う

 筆者の猟銃は空気銃で、鳥猟が中心だ。狩猟の対象は、都市部でも普通に見かける鳥が多い。狩猟鳥であるカモ類は、皇居のお堀でも年中見られる。キジバトは郊外の公園どころか、有明の埋立地にもいた。オスキジも近所の空き地で一度に4羽くらい見つけたこともある。都市で見られるこいつらは警戒感が薄く、人が近づいても逃げようとしないものもいる。

公園の木で日向ぼっこしているキジバト。筆者から2メートルも離れてない

 だが、銃猟できる地域にいる奴らは違う。カモやキジバトは銃の射程に容易に人を近づけさせないし、キジは息を潜めて隠れている。ハトはパタパタ飛ぶ鳥というイメージがあったが、猟場でツバメのように俊敏に飛んでいくキジバトもいて、これが野生かと驚かされた。

犬の散歩中に空き地にいたキジ。猟場のキジもこんな風に見つかれば……

 だが、野性味を全く感じさせない鳥もいた。ヒヨドリがそれで、これも公園で見かける鳥だが、人が近くに来ても警戒心が薄い上、銃声で逃げてもまた数分で戻ってくる。カラスに至っては、積極的に獲ろうという猟師がいないせいか、猟場でも普段どおりに群れているし、銃の射程に入っても警戒心が薄い。価値が高い獲物ほど警戒心が強いのは、淘汰による結果なのだろうか……。

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言っていることが皆違う

 猟友会の面々と茨城に狩猟に出かけた際、一緒にいた方がコガモを散弾銃で仕留めた。そのコガモを頂いたが、ここから少し厄介なことになった。獲物を仕留めた後の処理が、人によって皆違うのだ。

 例えば、仕留めた大きめの鳥は現場で腸を抜くという処理方法が、猟友会の講習で配られる『狩猟読本』や狩猟マンガの代表格『山賊ダイアリー』といった多くの本に書かれている。これは腸内で腐敗が進み、匂いが肉に移るのを防ぐためだが、必要ないとする人もいる。また、死んでから間もないうちは羽が抜きやすいため、獲ったその場で羽をむしる人もいるが、ジビエ料理のシェフが書いた本では、「羽をむしった所から腐敗していくので禁忌」としていた。血の匂いを減らす血抜きも、最近出た初心者向けの本では「鳥の場合は不要」とされている。

 違いは現場での処理にとどまらない。解体法も人によって大きく異なっていたし、中には本に載せた解体法がふさわしくなかったと、後に出た電子版では全面的に差し替えられたものもあった。このように手本とすべき本や人の方法論がバラバラで、初心者としてはどれを信じていいか分からず、とりあえずひとつひとつ試して「アタリ」を探すことにした。しかし、家で解体しようとすると、思いがけない壁が立ちはだかった。