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愛犬からも理解されない

 狩猟をする上での大きな障害は、家族や周囲の人の理解であると思う。生き物の命を奪う行為であるし、動物の死体を持ち込まれることに抵抗のある人は多い。筆者は実家暮らしだが、母がそれなりに抵抗感を持っている。だが、筆者の家族で狩猟に最も拒否感を示したのは、まったく予想だにしなかった柴犬(オス・4歳)だった。

普段はこんなに勇ましいのだが……

 帰宅後、コガモの入った袋に強い関心を示した犬だったが、すぐに部屋を出ていった。その後、ゴミ袋の中で羽をむしり、終わったらジップロックに密封の上で冷蔵庫に入れたが、それでも戻ってこない。

 元々、家の中に家族以外の人間が入ってくるのを極端に警戒する犬なので、嗅ぎ慣れない獣臭に警戒しているのかもしれない。エサの時間になっても戻ってこないので、他の部屋にいた犬をリビングに連れ戻したが、終始落ち着かずソファーの裏に隠れている。翌日は多少出てくるようになったが、冷蔵庫を開けるとビクリとして隠れてしまう。明らかに警戒していた。

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 知り合いの猟師から、「獲物の肉を食べさせれば変わるよ」とアドバイスを頂いたので、料理したコガモの肉を与えようとしても逃げ回る。犬を抑えて口元に肉を持っていき食べさせようとすると、震えながら断固として口を開けようとせず、あからさまな拒否をされた。肉と見ればなんでも食べていた犬が、ここまで怯えて肉食を拒否するのは初めてのことだった。柴犬は猟犬ルーツの犬なのだが……。

 まさか犬からも狩猟が理解されないとは思わなかったが、後でイノシシ猟をする人の話を聞くと、その人の家でもイノシシを持ち帰ると飼い犬の様子がおかしくなるという。これまで本やネットで見かけたことのない現象だったが、少なからず起きているのかもしれない。

写真では分からないが、小刻みに震えている

ヘボでヤマドリを逃がす

 今年度は地元の千葉県では狩猟者登録をせず、近場の茨城県と土地勘のある長野県で登録を行った。12月後半に長野にまとまって行ける機会があったので、1人で狩猟に出かけた。この時、猟果はまだない。

 事前にGoogle Mapなどであたりをつけた山に向かう。これまで経験した茨城の猟場と異なり、目に見える範囲に人造物がなく、引き上げるまで車1台見なかったような場所だ。猟をするには絶好の場所だったが、そのことが逆に怖くなった。事故や誤射があった場合、助けを期待できるような場所でないからだ。目立つオレンジ色の帽子、ベストを着用しているが、北海道で同様の格好をしていた森林管理局員が、猟師の誤射で亡くなった事件が1ヶ月前にあったばかりだ。

 猟を始めて10分もしない頃、何かが落ち葉の上を歩く音がする。目を向けると、真っ赤な美しいヤマドリがいた。いきなり狩猟鳥の中でも価値が高いヤマドリに出くわしたのに驚いたが、慌てて銃を取り出し、スコープのキャップを開け、空気銃のボルトを引き、弾を装填して狙いを定める。距離が近く、スコープいっぱいにヤマドリの姿が映し出される。イケるか、と思い引き金を引くと、弾が出ない。慌てていたため、ボルトを最後まで引き切っておらず、弾だけ装填された状態になっていたのだ。

 再度撃てるようにした時には、ヤマドリは姿を消していた。それから1時間、山の中でヤマドリを再発見しては追跡したが射撃の機会は訪れず、稜線近くまで出た時にはヤマドリを完全に見失ってしまった。