「女子の新種目」が支えてきたメダル獲得数の現実
しかも、この数字は新種目の恩恵を多大に受けたもの。第28回アテネ大会の金メダル16のうち、第18回東京大会のときに正式種目ではなかった種目を数えると、半分を超えて10になる。そのほとんどが「女子××」(男子では唯一、北島康介の男子100メートル平泳ぎが第18回東京大会にはなかった)。女子柔道48キロ級の谷亮子、63キロ級の谷本歩実、70キロ級の上野雅恵、78キロ級の阿武教子、78キロ超級の塚田真希らの女子柔道が正式種目になったのは1992年の第25回バルセロナ大会だ。女子レスリング55キロ級の吉田沙保里、63キロ級の伊調馨らの女子レスリングはこのアテネ大会から正式種目となった。野口みずきの女子マラソンも、1984年の第23回ロサンゼルス大会で正式種目となっている。柴田亜衣の女子800メートル自由形も、第18回東京大会にはなかった。
もちろん、リオデジャネイロ大会で新しく採用された7人制ラグビーのように、競技として新しいものもあるが(今回の東京大会では空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンが採用された)、前回の東京大会からの流れをざっくり見ると、男子がさっぱり振るわないのを、女子の新種目が支え、全体としてなんとか体裁を整えてきたが、実態としてはメダルは激減してきた、ということになる。
「史上最多の金メダルを獲得した前回の東京オリンピック並に……」といった表現をよく目にするが、「前回の東京大会並」とは、「前回大会の半分でもできれば」ということに他ならない。種目数との割合で言えば、「前回の東京大会並」は、金メダル33となる。これはリオデジャネイロ大会ならアメリカ(46)に次いで2位となる。そう考えると、メダル数に一喜一憂せず、純粋に競技を楽しむのが得策とも思える。
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