韓国人の一番の関心事は……
文大統領の演説では、日本については徴用工裁判や慰安婦問題などの特別な言及はなく、「韓半島の平和のために日本との協力も強めていく」とし、「過去は変えられないが未来は変えられる」、「力を合わせて被害者の苦痛を実質的に治癒したとき韓国と日本は心からの友人になれる」と触れるのみ。演説全体での比重はかなり小さかった。
韓国国内では、前日の第2回米朝首脳会談の決裂を受けて北朝鮮関連がどう修正されるかのほうに注目が集っていた。会談の数日前に高らかに発表した「新韓半島体制」構想も修正を免れないと考えられていて、実際、開城工業団地や金剛山観光再開のため米国と協議すると触れた以外には具体的な言及はなかった。
3月1日の演説では、決裂した第2回米朝首脳会談について、「長時間の会話を交わし、相互理解や信頼を深めただけでも意味がある進展」としていた文大統領だが、3日後の4日には国家安全保障会議を招集し、
「今までなんとかここまで来たが、壊れるのは一瞬だ」(ハンギョレ新聞3月5日)
と話したと報じられ、その落胆ぶりや緊張した様子が読み取れる。
米朝会談の決裂は文政権にとって「青天の霹靂」
会談前の韓国は会談には楽観した雰囲気で、終戦宣言や連絡所設
前出記者は言う。
「私自身、会談が決裂したという一報を聞いたときには、まさか、と呆然としました。ビッグディールはないにしても、スモールディールは確実だと信じ込んでいましたから。文在寅大統領も青瓦台もメディアも楽観的にすぎたのかもしれません。
会談が決裂した背景には、ジョン・ボルトン米大統領補佐官が完全な非核化を求めたビッグディールを提案したことがあるとされていますが、実は会談直前に釜山で韓国の鄭義溶国家安保室長がボルトン補佐官に会う予定でした。それを日本の谷内正太郎国家安全保障局長が同席すると聞き、韓国政府側が難色を示して結局はキャンセルしたともいわれていて、ここで会っていたら(米国の)動きが読めたかもしれないといわれています」