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むしろ文大統領に活躍のチャンス?

 ただ、一方、別の中道系の記者は、「文在寅大統領にとっては悪くない結果だったという見方もあります」と話す。

「次の米朝首脳会談や実務協議の行方が不透明な今、会談後にトランプ大統領が文大統領に電話会談で話したように、韓国に米朝の仲介役が求められています。

 そのため、昨年5月のように文大統領と金正恩労働党委員長の首脳会談を電撃的に開くかもしれません。

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 今回の米朝首脳会談では、米朝が互いに要求する水準があまりにも異なることが明るみに出て、その結果、互いの譲れない一線もわかった。ここからが本格的な交渉でしょう。

2月28日にハノイで会談する金正恩労働党委員長とトランプ米大統領 ©Getty Images

 北朝鮮としては、来年2020年は経済5カ年計画の最後の年でもあり、政治的には朝鮮労働党75周年でもあって、住民に何かしらの成果を見せなければならない。金委員長としては、ようやく作り上げた核を全面的な制裁解除や経済支援などの高い価値で売りさばかなければならない。そのためにはトランプ大統領の任期中に米国と会談したいはずで、米朝が決裂したことで文大統領の仲介役の幅が広がったともいえるのです」

新・駐日大使内定に2つの見方

こんな中、韓国では新しい駐日大使として元青瓦台の国家保安室の第二次長が内定したと報じられた。この人事については2つの見方があるという。前出記者の話。

ひとつは現在の李洙勲駐日韓国大使があまりにも日本政府とのコミュニケーションがとれないため、日本で勤務経験のある元外交官を起用して日韓関係を改善するための布石ではという期待と、もうひとつは放置・無視という対日外交の指揮を執ってきた文大統領の側近を日本に送り、文政権の限り放置・無視の対日外交が続くという悲観的な展望です。後者のほうが濃厚ではないかといわれています」

 いずれにして、文大統領の視界は、PM2.5で覆われたソウルの空のように、いずこを向いても先が見えない状態のようで、その視線は北朝鮮にしか向いていないのかもしれない。