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日本人のイマジネーションでは届かない世界なんじゃないか

 国内ではどうでもいいプログラムのいたずらで兵庫県警が少女を補導するニュースがセキュリティ界隈でホットな話題となり、ジャニーズ事務所からタレントが脱退しそうだという芸能ニュースが大きく取り上げられたり、みんなヒマすぎて平和を謳歌しきっている状態なわけですよ。

 そういう平和な日本が、いつも危機的状況を生き抜きシビアな判断をし続けている金正恩さんの考えや気持ちを理解しろと言ってもまあなかなか無理なんじゃないか、と思うのです。幼少期はスイスに留学し、欧米人のご学友から「あいつはいい奴だったよ」と評される普通の神経の持ち主が、猜疑心を滾らせ粛清や暗殺も辞さぬ修羅の北朝鮮を世継ぎしているというのは、なかなか日本人のイマジネーションでは届かない世界なんじゃないかとすら感じます。

©iStock.com

 もう随分前になりますが、極東ロシアのウラジオストクから北朝鮮国境に近いハサンという小さな集落に用事があって足を向けたとき、普通にしていたら日本人と見た目もほとんど変わらない北朝鮮人たちと、黒竜江省から来たという中国人などが混ざって1週間過ごしました。

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「金正恩ならどう考えるかな」と思いを巡らす

 みんな遺伝子的にもたいして変わらず、着ているものも雰囲気もそう大差ないのに、喋る言葉が違い、政治体制が異なり、生き抜く環境が変わるだけでこんなに生き様も違うものなのかと驚きます。腹いっぱい食べて酒を飲んでしまえばみんな友達、と日本人は思うことが多いと思いますけど、その食べたいだけ食べられる環境に育っていない人たちの意識や、ほとんど学識がなく自分の将来に展望を描けない人たちが吐露する人生や社会への絶望のような話を聞くとやはり北朝鮮への見方も変わってくるものです。

 ああ、金正恩さんってこういう人たちを束ねて国家を切り盛りしているんだ。そりゃミサイルの一つも配備して、諜報国家として国民を縛っておかないと安心できないんだろうなあと思っちゃうわけですよ。

トランプ大統領との会談翌日の金正恩委員長 ©getty

「そういうのを日本人も理解しろ」とは言いませんが、飛行機で成田からたかだか3時間のところで暮らす人たちですら、ああもう全然違うんだな、こういう人たちの親分の必死な外交をアベちゃんは台無しにしたと韓国人から言われているんだな、という達観を是非、味わってほしいと思います。

 金正恩さんになりきったつもりで国際報道を眺めてみると、意外といろんな思いが去来するかもしれません。

 また、辛いときに「金正恩ならどう考えるかな」と思いを巡らすだけで、思わぬ解決策が出るかもしれませんし。