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「恥ずかしい」「ゾワゾワする」とのご意見も

 このドラマ、視聴者の感想がばっさり分かれているのがおもしろい。渋井直人のライフスタイルや独特のモノローグを「可愛い」「親しみやすい」「ずっと眺めていたい」と肯定的に捉える層もいれば、「痛い」「恥ずかしい」「ゾワゾワする」とのご意見も。

 前者はそのまま素直に見ていただくとして、後者の「恥ずかしさ」「ゾワゾワ」の正体が気になるところです。

 ドラマの設定上、渋井直人の年齢は52歳。1966年生まれと考えれば、浪人せず4年制大学卒業で就職した時、世の中はまさにバブルの最終章。クリエイティブ職にとって、今の100万倍はイケイケだった時代。

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 そこから約4年、ギロッポンでチャンネーとシースーという中山秀征的な、もしくは元麻布の隠れ家イタリアンで読モとティラミスといった石田純一的なバブルは崩壊し、その後社会に出た若者たちは「ロストジェネレーション」とも呼ばれて、時代はティラミスからもつ鍋へ。

中山秀征 ©文藝春秋

 渋井直人はバブル最終章に若手として師匠や先輩たちから足蹴にされ、やっと独り立ちして自分の名前で仕事ができると思った矢先にバブルが崩壊しちゃったトホホな人じゃないかと思うのです。バブルからロスジェネへの切り替え時にイロイロこじらせてしまった世代のクリエイター。

女性たちは、どこかみんな“記号”っぽい

 そのこじらせを振り切るかのように、現在の彼の日常は「こだわり」に満ちています。自宅も併設する事務所ではおもにミッドセンチュリーの家具を揃え、アナログレコードを駆使してのDJプレイ。行きつけのカフェにはハンドドリップが得意な店主がいて、店内には古書とアナログ盤がぎっしり。あ、当然アイドルも押さえてますよ。推しは欅坂46の渡辺梨加ちゃん、Tシャツだって持ってるし。日常の行動範囲は目黒区と世田谷区、たまに渋谷区。下北沢は雑多な街だけど、最近はオーガニックワインと季節のフルーツを使ったパフェを食べさせる店もできたみたい。

 ……うん、これはゾワゾワする。

『デザイナー 渋井直人の休日』予告編(番組公式Twitterより)

 さらに、渋井直人が約1話ごとに恋をする女性たちは、どこかみんな“記号”っぽい。ムサビに通うひる美、アーティストの夢子、インスタで知り合ったmiyukibeef、昔の仕事仲間のチワワ、小料理屋で出会い、一夜を共にした(?)カモメ。彼女たちに共通するのは20歳以上年下でどこか不思議ちゃんモード&自分が優位に立てるという点。なんだ、この一昔前のおじさんドリームは。