「『バイプレイヤーズ』の撮影の終わり頃だったかな。漣さんから、いつもの調子で『研ちゃん、夏に映画撮るから出てよ』って言われたんです。どんな役かも何も聞かず、二つ返事でOKしました」
今年2月に急逝した大杉漣さんの“初のプロデュース作にして最後の主演作”『教誨師』が公開される。
教誨師に着任した牧師の佐伯が、年齢、境遇、性格も異なる6人の死刑囚と「対話」を始める。光石さんが演じるのは気のいいヤクザの組長だ。
機嫌よく喋り続ける者、罪を反省せず薄ら笑いを浮かべる者……。しかし、教誨室という密室の中で、それぞれが隠してきた「何か」が露わになっていく。
「現場に行ったら、ちょっと読み合わせをしてすぐ『カメラを回してもらおうか』。ほぼ一発撮りで、『2人がどう動いても撮ってやる』というスタッフのプロ根性も見事でした」
実直、誠実を絵に描いたような佐伯もまた、忘れたい過去と対面することになる。
「漣さんと向かい合ったときに、もう目がいつもと全然違うんですよ。目の前に巨木が根をはっているような圧倒的な存在感が忘れられません」
自らを「現場者」と評した大杉さんのスピリッツは、30年来の友人でもあった光石さんにも受け継がれている。
「僕も現場こそがすべてだとずっと思っています。身体一つで現場に生きる。あの現場で2人で向かい合って演技した時間は、本当に幸せでした」
INFORMATION
『教誨師』
10月6日(土)より有楽町スバル座、池袋シネマ・ロサほかロードショー
http://kyoukaishi-movie.com/