サミュエル・マオズ監督

 公開中のイスラエル映画『運命は踊る』。物語はある夫妻が息子の戦死という“誤報”を告げられるシーンで始まる。

 サミュエル・マオズ監督はデビュー作『レバノン』でヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞、今回は同映画祭で審査員グランプリを獲得した。

「この皮肉な設定は実体験から思いついた。私の娘は遅刻癖がひどくて、ある登校時の朝に叱り飛ばしたんだ。“今日はバスで行け!”とね。ところがまもなく市内で自爆テロ発生のニュースが流れた。娘は無事だった。彼女はそのバスにも遅刻して乗り遅れたんだ(笑)。以降、私は運命について考え始めた。人生は偶然の産物か? あるいは見えざる手の力が働いているのか?」

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 残酷な誤報に翻弄されてゆく家族の運命。監督は映画に運命のメタファーを盛り込む。原題は「フォックストロット」で、社交ダンスの一種。ステップが永続的に輪を描く法則は仏教の因果応報に近い。

「私の母親はホロコースト・サバイバーで、我々2世も抑圧を背負っている。この感覚は日本でも共感してもらえるのでは。日本人とユダヤ人は世界大戦で負った過酷なトラウマを生き抜いてきた民族だから」

INFORMATION

『運命は踊る』
ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー中
http://www.bitters.co.jp/foxtrot/