※座談会・新しい技術と戦争の将来(前編)から続く
サイバー空間という暴力の民主化
――サイバー戦もまた「国家が独占してきた暴力の民主化」ですよね。
伊藤弘太郎 素人的な質問として、今、サイバー空間というのは具体的にどんな状況なのですか。どのぐらい無秩序なのですか。
我々が生活していると、表向きはパソコンに何も異常はなくて、たまに変なメールが来ますけど、全部しっかり消して問題はない。が、サイバーの専門家から見れば、「伊藤さん、実はめちゃくちゃやられていますよ」という状況なのですか? 国家レベルでは、よく「米朝間では、すでにサイバー戦争が事実上始まっている」と言う人もいますね。
林真吾 「サイバー戦」は起きています。少なくとも、スキャン行為とか偵察行為とかは常に行われています。私が持っているノートパソコンは、モデムが入っていて、インターネットにつないでいるんですけれど、ログを見ると攻撃とか偵察のパケットが飛んできている。国内が発信源のものもあるし、国外というのもあるんで、ひっきりなしに何かスキャンしているのは間違いないです。
首相や防衛大臣のSPのスマホが盗聴器に!?
――日本のハッカーの競争力ってどれぐらいなんですか。
林 年1回デフコンという有名なハッカーコンテストがあるんですが、今回、予選を通過して決勝に進出するチームが2つ、日本から出ています。これは誇っていいことです。
――すごい! 他の国で言うと、レベルが高い国はどのあたりなんですか。
林 最終的には米国が大抵優勝をさらっています。
南政樹 現在はスマートフォン社会なので、現役世代はほぼみんなが1台以上は持っていますが、高度な個人情報が常に携帯されている状況になっているわけですよね。
林 ハッカーがスマートフォンの個人情報に興味を持つかどうかは別として、すでに個人情報は抜かれていると思います。ビッグデータみたいな文脈で語られるでかい企業は全部収集しているでしょう。街中のあちこちに設置してある無料Wi-Fiスポットなんて、個人情報を抜いてくださいと言わんばかりの仕組みを備えています。
――首相や防衛大臣のような要人だったら狙えるし、狙うという感覚でいいんですかね。
林 その友人を狙うのはありですね。ちょっと陰謀的な話になるんですけれど、大臣と一緒に行動している警備員とかSPの人たちのスマホにアプリを仕込んで、盗聴モードをオンにするとか。ある時期の某スマホではWebブラウズしただけで攻撃される状況があって、敷居が低かったりしました。
――なんと! 腕があればできるんですね。
林 未知の脆弱性とかを使えばできちゃいますね。