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イスラエルのドローン技術者が首相官邸のセキュリティに驚いた理由

座談会・新しい技術と戦争の将来(後編)

2018/08/30
note

イスラエルは、必ず対抗策も用意する

伊藤 サイバーセキュリティの専門家から見て、ドローンのようなコンピュータ制御のテクノロジーに対して、「どうせハッキングされるのに」といった刹那的な考えはないんですか。

 そこはソフトウェア、通信といったところで安全に守れると私は思っています。

伊藤 一方で、自分たちはプロテクトできるかもしれないけれど、相手はそこを突破しようという考えはあるわけじゃないですか。その現実性はいかがでしょう?

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 それは品質次第で、攻撃を割に合わないようにすることかもしれません。

――先ほど、イスラエルではカウンタードローンの技術が発達したという話がありました。

 

 イスラエルは国土全体がある意味で戦争状態なのであらゆるものが脅威。そうすると脅威を自分たちで作ることができるのであれば、必ず対抗策も用意するのが彼らのやり方です。

 例えば、ドローンはWi-Fiと同じ周波数の電波を使って制御するんですけれども、簡単に言ってしまえば乗っ取りができてしまう。通信をして制御をしているドローンであれば、その電波を乗っ取って、自分に主導権があるように見せかける形で安全なところに下ろすという方法があります。

 まずは自分で買って、中身を解析してみたいですね。

2015年には首相官邸の屋上にドローンが落下

 カウンタードローンの役割として、もう1つ重要なのが飛来したドローンの発見です。操作系の制御を無線でやらなくて自律的に動くドローンもあるんですけれども、そこから発生する周波数とかを全部トラックして発見する。これはドローンなのか、自動運転車両なのかということを特定する。で、未確認のものであるときは、継続的にウォッチしながらアラートを上げていく。

 そういったレーダー機能もたくさんありました。「100機くらいのドローンが一気に日本上空にやってくるとレーダーが飽和しちゃうよね」という危惧があるんですけれども、イスラエルの会社は「そんなのはもう昔の話っす」「5万機でも10万機でも飛ばしてください」みたいな感じで、飛んでくるドローンは全部探しますよと。「イスラエルのベンチャー企業が今、(ドローン技術を)日本に売ろうとしているんだけど、首相官邸を紹介してくれないかな」とも言われましたね。

伊藤 2015年には、首相官邸の屋上にドローンが落下するという事件があって騒ぎになりましたね。

 

 そうそう、「首相官邸にこういうカウンタードローンの機器って入っているのかな」と聞かれて、「多分ないと思うよ」と言ったら「えー」と驚かれましたね。

 迎撃には色んな方法がありますけれども、電波でジャミングかけるというやり方もありますし、やはり一番過激なのはレーザーで物理的に破壊する。見えない光が飛んできてドローンのどこかに当たる。例えば、モーターにダメージを与えれば回転できなくなってしまいます。