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イスラエルのドローン技術者が首相官邸のセキュリティに驚いた理由

座談会・新しい技術と戦争の将来(後編)

2018/08/30
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法的にも能力的にもドローンを迎撃できない自衛隊

伊藤 ただ我が国はドローンを破壊できないですよね。

 破壊はできないです。

――法的にも無理ですね。「五芒星旗」とか「人民解放軍」と書いてある場合はいいですけれど、宣戦布告されない限りは私有財産なので。

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伊藤 場合によっては重要インフラの上空に同時多発的に来て、「いっせーの」でズドーンと……。

 

――法制度全体が第二次大戦で止まっているんですね。自衛隊もそうで、ベトナム戦争で頭が止まっている。せいぜい湾岸戦争状態で、いまだにドローンもほとんどもっていない。とても戦争の変化に追いついていません。

伊藤 今の日本が持っているレーダー技術ではドローンを探知するのは難しい?

 難しいと思います。対象が全然違いますし。

伊藤 実際、尖閣諸島では中国がドローンを使っていたときにF-15で対応したという事件がありましたよね。

 はい。コストパフォーマンス上よくないですね。

実はローテクの対策が有効

伊藤 そういう場合には、どういうふうにカウンターバランスを持つ必要があるんですか?

 日本の専守防衛という方針から考えると、やっぱりちゃんと事態を把握できなきゃいけなくて、その能力すらないことが僕は危険だと思います。

 対策としては色んな方法があると思うんですけれど、割とローテクの方が効くんじゃないかなという発想はあります。例えばオランダは、鷹を使っています。

 風船もいけそうですね。

 

 あとは上から水をかけるとか、もう笑っちゃうような対策をまじめにやることで意外と効果がある。もちろんドローン対ドローンで対峙するという方法もあって、警視庁はドローン捕獲用のネットを持たせて飛んでいくという試験をやっています。

――県警レベルでは持っているんですかね?

 持っていないと思いますね。なんかもう、本当に自治体のレベルになると手出しができないから、職質かけて怪しい人を片っ端から挙げることになるかと。

伊藤 すごい馬鹿な質問をしていいですか。ドローンで撮った映像が「文春砲」になる可能性はあるんですか?

 ありますね。ちょっと大きい機体だとマイクロフォーサーズのレンズが使えるので、いわゆる望遠レンズが使えるんですよ。250~300mmのやつが。そうすると音もなく忍び寄って上からパシャパシャと撮ることができちゃうんですけれども、東京都心はダメですね。高いビルが乱立していて遠くからの見通しがきかないので。