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光石研『デザイナー 渋井直人の休日』の“おじさんドリーム”にゾワゾワする理由

おサレ感や恋愛モードを求めていないはずだけど……

2019/03/21

おじさんって「教えてあげる」の好きですよね

 おじさんドリームといえば、忘れられないのがあの“大炎上”です。2017年に雑誌『GG』が創刊される際、当時の編集長で『LEON』等、多くの雑誌を手掛けた名物編集者・岸田一郎氏が某所に発表したナンパ指南のコラム。いわく(&意訳)「美術館にはおじさん好きの不思議ちゃん女子がたくさんいるから、いろいろレクチャーしてあげよう」「一緒に焼肉を食べる時は牛肉の部位を女の子の体をツンツンして教えてあげよう」とバブルモード全開でぶち上げたところ、「気持ち悪い」「普通にセクハラ」「バカじゃないの」とSNSは大火事に。

 その火がくすぶったまま、2018年に『GG』版元は倒産し、当然雑誌も休刊という哀しい結末を迎えました。それにしても、ある年代以上のおじさんって「教えてあげる」の好きですよね……頼まれてもいないのに。

『デザイナー 渋井直人の休日』から醸し出される恥ずかしさやゾワゾワする感じって、このあたりにあるんじゃないかと思います。今どきのおサレ感を前面に出しながら、無意識にバブルを引きずっている渋井直人のメンタリティ。さらに自分が優位に立てる二けた年下の相手しか選ばない恋愛観。むしろ裸足に革靴、国分寺のパチンコ店の看板で笑っているバブルの化身・石田純一師匠の方がわかりやすくて清々しい。

“わかりやすくて清々しい”石田純一 ©文藝春秋

ビール片手に眺めながら、ほっと一息つきたい

 また、これまで決して「おしゃれ」キャラではなく、どちらかというと泥臭い方向で売ってきた光石研が渋井直人を演じることで、作品に必要な痛さや気まずさが自然に生まれている気もします。さらに、渋井を冷静な目で見つめるゆとり世代のアシスタント・杉浦ヒロシに、どこかイケてない風情の岡山天音をキャスティングしたことで、杉浦が視聴者の思いを代弁する構図もきっちり成立。

 確かに今のドラマ界のトレンドの1つは「おじさん」ですが、そこにおサレ感や恋愛モードを求めていない女性視聴者は多いはず。それより画面の中でわちゃわちゃするおじさんたちをビール片手に眺めながら、ほっと一息つきたいのです。だってほら、現実世界でつき合うおじさんたちは、ドラマの中よりずっとメンドクサイ存在だったりしますから。

INFORMATION

『デザイナー 渋井直人の休日』
テレビ東京 毎週木曜深夜1時~
https://www.tv-tokyo.co.jp/shibuinaoto/

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