「国試浪人が200人くらいたまっている」私大OBのぼやき
こうした大学では新卒の国試合格率が極端に下がらないように、国試に合格できる見込みのない学生は卒業をさせないと言われています。ある私大のOBから「6年間留年なく卒業して一発で国試に合格できるのは120人の同級生のうち40人くらい」で、「国試浪人が200人くらいたまっている」と聞いたこともあります。
医学部の大量留年が問題となったので、現在は多少改善されているかもしれませんが、留年や国試浪人が多いことを考えると、こうした大学の実質的な合格率(医学部入学者が最終的に国試に受かる割合)は、もっと低くなるでしょう。
それに注目すべきは「新卒」だけでなく、「既卒」の合格率です。実は新卒者の合格率は全体で92.4%と高いのですが、既卒者の合格率は56.8%で、しかも受験回数が多いほど合格率が下がる傾向があります。これが何を意味しているかというと、何回チャレンジしても、国試に合格できない人がいるということです。
私立の医学部だと、6年間で安くて約2000万、高いところだと5000万円近くかかります。留年すればさらに授業料が何百万円もかかりますし、国試予備校に通えばそこでも数百万円の授業料が必要です。よほどのお金持ちなら別ですが、せっかく医学部に入ったとしても、6年間ストレートで卒業して国試に一発合格できなければ、大出費になることを保護者は覚悟しておく必要があるでしょう。
東京大学医学部の合格率が「55位」の理由
では、受験偏差値でも、医学部ヒエラルキー(伝統的な序列)でもトップに君臨する「旧七帝大」はどうでしょう。合格率が一番よかったのが東北大の94.0%で15位、次が名古屋大の91.7%で30位、大阪大が90.6%で45位、京都大が89.8%で50位、東京大が89.0%で55位、北海道大と九州大が88.0%で59位でした。
旧七帝大のパッとしない成績を意外に思った人も多いのではないでしょうか。とくに、受験偏差値が全大学・全学部の中で最高の英才たちが集まる東大医学部の合格率が平均と同じで、順位も中の下なのが目を引きます。
実はこれも毎年のことです。受験が得意な東大医学部の人たちがまじめに取り組めば1位になっておかしくないと思うのですが、どうして国試ではふるわないのでしょうか。それにはいろいろな理由が考えられます。
まず、旧七帝大のような伝統ある大学では、国試対策の授業やテストをほとんど行いません。現役時代から国試予備校に通うような人も、プライドの高い旧七帝大の学生では少ないはずです。ほとんど自助努力で国試に挑むことになるわけですから、偏差値が高い人たちといえども対策が不十分で、落ちる人がいるということなのでしょう。
ただし、東大医学部OBから、こんな話を聞いたこともあります。こうした超難関校に入ってくる人たちの中には、受験界の頂点に入ることが目的になっていて、医学そのものにあまり興味が持てない人もいるというのです。
とくに医学は、臓器、器官、骨、神経、血管、組織等の名前を細かく記憶しなければならない解剖学が典型ですが、大量暗記を求められることの多い学問です。難しい問題を工夫して自力で解くことに快感を覚えるような高偏差値の人の中には、大量暗記をバカらしく思ってしまう学生もいると言うのです。
そのような学生にとって、臨床医になるための勉強を6年間も続けるモチベーションを保つのは大変なのかもしれません。それに、東大や京大でも、国試浪人したのに再度落ちてしまう人がいます。やはり、どんなに高偏差値の大学に入っても、ずるずると国試浪人を繰り返し、あげく医師になれないで終わる人がいるのです。