異常な医学部受験ブームのために、医師になるモチベーションの低い人や、医師に向かない人たちが医学部に入ってくるようになりました。そのために、一部の医学部では別の問題も抱えています。それは「留年」です。

 とくに一部の私立大学では、大量の留年が発生しています。ある私立大学を卒業した研修医は、私の取材に次のような衝撃的な事実を打ち明けてくれました。

「ストレートに国試に受かったのは3分の1」

「私の大学は同級生が120人いたのですが、1年目で20人ほどつぶれました(筆者注・留年のこと)。ストレートに6年間で卒業して、医師国家試験(国試)に合格できたのは40人ぐらいではないでしょうか。最終的に80人は国試に合格できると思いますが、他の人たちはいつの間にか転部して医学部から消えたり、卒業できずに放校されたりします」

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 その大学では卒業はできたものの、医師国家試験に受からず浪人している学生が200人ほど溜まっているという話も、ある医学教育関係者から聞きました。医学部に入りさえすれば、誰もが簡単に6年で卒業して医師になれるわけではないのです。

いつの間にか医学部から転部して姿を消したり、卒業できずに放校される人も ©iStock.com

 そもそも、医学部は1単位でも必修科目を落とせば、留年させられてしまいます。他学部では多少試験に落ちても、規定の単位数をクリアしていれば、進級することができます。なので、サークルにバイトに遊びにと、青春を謳歌している学生がたくさんいます。

「医学部がこんなにシビアな世界だと思っていなかった」

 しかし、医学部ではあまり遊ぶ余裕はありません。医学の専門教育が前倒しされたので、1年生からしっかりと勉強する必要があります。受験勉強が終わりホッとしたのもつかの間、国試に受かるまで6年間ずっと怠らずに精進する覚悟が求められるのです。前出の研修医も、次のように吐露していました。

「大学に入るまで、医学部がこんなにシビアな世界だとは想像もつきませんでした」

 実は同じ私立でも、大学によって大量に留年が発生するところと、そうでないところに大きく分かれています。とくに医師国家試験の合格率が高い大学では、「1学年約100人のうち6年で卒業できないのは2、3人」というほど留年が少ないのです。なぜ、そんなにも差が出るのでしょうか。

医師国家試験の合格率が高い大学の特徴

 それは「医師になる」というモチベーションの違いなのではないかと思います。医師国家試験の合格率が高い大学は、授業料が免除される代わりに9年間の地方勤務が義務づけられる自治医科大学や、授業料を大幅に下げて偏差値がトップクラスになった順天堂大学など、優秀で「医師になる」というモチベーションの高い学生が集まる大学が多いのです。医学部関係者によると、医学部1年目から成績がいい学生は、卒業するまでずっとその成績を維持する傾向が強いそうです。