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ドイツに70年代に移住した日本人アーティストが描く「ここではないどこか」とは

アートな土曜日

2019/03/23

道を見失わないような工夫

 今展はイケムラレイコの全体像を示すべく、ごく初期のものから最近作まで、あらゆる時期の創作が並ぶ。その数、200点以上。壮観のひとことではあるものの、そんなに膨大な作品を一挙に浴びて、観る側としては受け止められるかどうか、ちょっと心配になってしまう。

イケムラレイコ《始原》 2015 年 作家蔵
イケムラレイコ《ベルリン地平線Ⅰ》 2012 年 作家蔵
イケムラレイコ《ハルコ I》 2017年 個人蔵

 が、そこはよくよく趣向が凝らされているのでだいじょうぶ。展示は「少女」「アマゾン」「有機と無機」「炎」「メメント・モリ」「コスミックスケープ」などと名付けられた16のテーマに分かれ構成されている。イケムラが表現においてこれまで探求してきたことがしっかり整理され、網羅してあるので、道を見失うことはなさそう。

 導線が複数あって、各テーマの展示を自在に行き来できるのもうれしい。観る側は思うがまま気の向くままに、大空間を逍遥すればいい。イケムラレイコがつくり出した豊穣な世界で、存分に想像の翼を広げたい。

ドイツに70年代に移住した日本人アーティストが描く「ここではないどこか」とは

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