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「不正なことはしていない」と言い張るJOC竹田会長退任で、五輪買収問題を幕引きとしていいのか?

関係者からは開き直りのような発言も

2019/03/23
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竹田恒和 JOC会長
「不正なことはしていない。潔白を証明すべく今後も努力していきたい」
朝日新聞デジタル 3月19日

 招致委員会の理事長だった竹田氏が、正式に仏司法当局の捜査対象になったのは2018年の年末。今年1月15日、疑惑を否定するために開いた記者会見の会見時間はわずか7分。「フランス当局が調査中の案件のため」との理由で質疑には一切応じなかった。

 疑惑のあらましはこうだ。竹田氏が理事長だった東京五輪招致委員会が2013年7月と10月の2回にわたって、シンガポールのコンサルティング会社、ブラックタイディング社に180万ユーロ(約2億3000万円)支払った。支払いの一部が同社を通じてアフリカ票に影響を持つラミン・ディアク氏とその息子、パパ・マッサタ氏に渡ったと見られている。2016年のブラジル・リオ五輪では、まったく同じ構造の贈賄容疑で同国五輪委員会会長だったカルロス・ヌズマン氏が逮捕されている。

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竹田恒和氏 ©文藝春秋

 竹田氏は1月15日の記者会見で、「招致委員会からブラックタイディング社への支払いはコンサルティング業務に対する適切な対価であった」と強調したが(FNN PRIME 1月15日)、JOCも竹田氏も2億3000万円の使途については把握していなかった。何がどう適切なのだろうか? 退任表明後の取材では「潔白を証明すべく今後も努力していきたい」と語ったが、具体的には何も語らなかった。

疑惑の多数に電通が関与

竹田恒和 JOC会長
「電通にその実績を確認したところ『十分業務ができる、実績がある』と聞き、事務局で依頼を判断したと報告を受けた」
BuzzFeed News 2016年5月16日

 竹田氏が退任することで一連の疑惑が一件落着すると考えている人は皆無だろう。東京新聞の社説は「彼一人の責任だろうか」というタイトルで「一連の問題の責任を一人に押しつけて幕引きとしてはいけない」と記した(3月20日)。朝日新聞は「疑惑契約は官民含む『オールジャパン』」という見出しを打っている(3月19日)。記事では、ブラックタイディング社との契約について後押ししたのは広告会社・電通の関係者であり、招致委員会に出向していた文部科学省や外務省の官僚、都庁の役人も関わっていたと指摘した。

 2016年5月16日の衆院予算委員会に出席した竹田氏は、ブラックタイディング社から「売り込みが招致委にあった」と答弁。電通に確認を取った後、コンサルティング業務を依頼したことを認めた。東京五輪招致の疑惑に電通が関わっていることは多くのメディアで指摘されている。