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「やることをやるだけ」 阪神・梅野隆太郎、ポジションは“白紙”と言われた男の覚悟

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/04/27
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「無駄にしたくない」の言葉の真意

 広島に合流する直前、自宅近くの神社へ足を運び「また明日、良い日が来るように」と手を合わせた。回復を天に祈ったのは左足だけではない。実は、昨季終盤には右手首も痛めて、シーズン終了後に「疲労骨折」と診断された。この時も、リハビリ組に入ることなく、痛み止めの注射を打ちながら、そのまま11月の秋季キャンプに参加。今春キャンプも練習量を時折、抑えながらバットを振っていた。身体を対角線で結ぶように大きな故障を二つ抱えながら、試合に出ることの意味は、本人が一番分かっている。正捕手への挑戦権は掴んだまま離すわけにはいかない。「無駄にしたくない」の言葉の真意はここにある。

 もしも、野球の神様がいるならば「梅ちゃん」の覚悟は伝わり、微笑んでくれたのではないか。復帰してからは、ケガの影響を感じさせないほどバットから快音が響き、並み居る強打者たちとリーディングヒッターを争っている。極めつけは、4月9日のDeNA戦でセ・リーグの捕手では史上初となるサイクルヒットを達成し、お立ち台では地元・福岡にちなんで「明日も勝つばい‼」と絶叫。「梅野」「骨折」「勝つばい」が、SNS上に溢れかえった。

 だが、開幕からチームは波に乗りきれない。それが何より、梅野の“激痛”だろう。昨年「最下位」を経験した捕手は、忸怩たる思いで今日もミットを構えている。反省している時間が足りないほど高速に「今日」はやってくる。「次の日も試合が来るので切り替えていくしかない。(ケガにも)甘えてはいられない。責任を持って、毎日、戦っていく」。“良薬”は勝利しかない。覚悟を決めて、試練から始まった1年を戦い抜く。

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セ・リーグの捕手では史上初となるサイクルヒットを達成 ©スポーツニッポン

チャリコ遠藤(スポーツニッポン)

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