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現代アートの格好の入口として
「ただいま/はじめまして」展は、収蔵品のなかから約20人を選び、おもに2010年代に制作された作品を並べてある。ポップアートの中心人物として知られるロイ・リキテンスタインから始まる展示は、棚田康司や今井俊介といった現代作家たちへとごく自然に受け継がれていく。
細かい線描を画面いっぱいに積み重ねていくのは文谷有佳里だ。音楽や身体表現にかかわってきた経験を生かし、人の生理に直接訴えかけてくるような線のかたまりを紡ぎ出している。
展示の後半には、宮島達男の巨大な作品《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》がドンと設置されていた。無数の赤色デジタルカウンターが、ひとつずつ異なる速度で1から9までの数字をカウントしていく。この数字が表すものはいったい何だろう。時間そのもの? 生命の比喩? 人によって答えは異なるだろうけれど、作品の目の前に立った者を深い思索に誘うのはまちがいない。
館内に展開された膨大な作品の、一つひとつがどれも心に響くかどうかはわからない。けれど、これほど多彩な作品群を突きつけられると、人はこんなにいろんなことを考えつくものなのかと単純に驚かされるのはたしか。想いをかたちに落とし込む強い意思の存在が垣間見えるたび、観ているこちらの心は強く揺り動かされてしまう。
現代アートへの入口として、まことぴったりな両展である。