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リニューアル・オープンの美術館が教えてくれる、日本美術の100年

アートな土曜日

2019/03/30

 ここ3年ほど工事休館していた東京都現代美術館が、このたびリニューアル・オープンと相成った。広い展示空間ではふたつの展覧会が企画され、全館を使って収蔵品をたっぷり紹介している。リニューアル・オープン記念展の「百年の編み手たち −流動する日本の近現代美術−」と、MOTコレクション展第1期としての「ただいま/はじめまして」展だ。

 

日本のアートの特長が垣間見える

「百年の編み手たち」のほうは1910年代から現在まで、およそ百年の日本美術の歴史を実作でたどれるようになっている。

森村泰昌《肖像(少年1,2,3)》1988年
横尾忠則の作品群

 最初の部屋に掛けられた岸田劉生による肖像画は、小品とはいえたしかな存在感を発している。発祥の地たる欧州から遠く離れた日本の地で、油彩画を描くことの意味合いをよくよく噛み締めながら創作している様子が、ずしりとした重みある筆致から窺える。

 海に浮かぶ帆船を描いた吉田博の版画連作は、江戸時代の浮世絵から続く多色刷り版画の伝統に、新しい時代の色彩感覚と光の捉え方を持ち込んで新鮮だ。

 瑛九《カオス》も、カラフルで抽象的な図が画面いっぱいに広がって目を惹く。横尾忠則の絵画における独特の色使いは、いま見ても斬新そのもの。

瑛九《カオス》1957年

 ただし通覧していくと、作品の色合いは全体的にアースカラーが目立つ印象だ。描かれている人物や建物の形態もどっしりと地に根を張るような表現が多い。そこにはアジアの風土や民族性が、色濃く反映されているだろう。