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ラブシーンで何度もNGを……萩原健一、68年の面白くてかっこいい人生

ラブシーンで何度もNGを……萩原健一、68年の面白くてかっこいい人生

余談がすべておもしろい

2019/04/02
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余談がすべておもしろい

 本題に入る前の余談がすべておもしろい。萩原さんは昔話を懐かしむように、楽しげに語ってくれた。映画『約束』の演技が高い評価を得て、日本テレビが石原裕次郎を主演にした刑事ドラマ『太陽にほえろ!』を開始するにあたって、新人刑事役として白羽の矢を立てたのが萩原さんだった。

「俺、最初はやりたくなかったんだよ。プロデューサーが持ってきた台本読んだら、俺のあだ名がボーヤだよ。ボーヤ、どう思う?」

「坊やですか!?」、私が大笑いすると、萩原さんはうなずき、

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「しかもテンガロンハットかぶってオートバイで登場ってト書きにあるわけ。いったいどういう刑事なんだ?って思うじゃない。けれどプロデューサーが熱心に口説くから、じゃあ俺の好きなようにやらせてくれたら出演しますよって言ったら、それでいいって言うから出演することにしたわけ。そのとき1年で必ずやめますっていうのも条件をつけました」

©AFLO

『ボス、大変です!』が『ブス、大変です!』に

 長髪にパンタロンのスリーピース、オープンカーのスズキ・ジムニーを駆って七曲警察署に出勤するワイルドな新人刑事。70年代の若者は萩原さん発案の型破りな新人刑事に熱狂した。

「出演動機のひとつは裕次郎さんと共演できること。裕次郎さんはガキの頃から俺のあこがれの人で、最初会ったときはそりゃ緊張しました。現場で仕事をご一緒するようになってからは、裕次郎さんは俺のことをすごく可愛がってくれて、長髪の俺を『おい、シラミったかり』って呼んでね、またいろんなお店に飲みに連れて行ってくれました。とにかくそのときは、これでもかっていうくらいお酒を飲みました。酔った裕次郎さんを背負ってご自宅まで届けたこともあったっけど、体が大きくて足が長いから、あちこちにぶつけちゃう。そのたびに裕次郎さんが、俺の頭をパチンと叩くんだ(笑)。

 お酒の種類はなんでもいけたけど、よくドブロクを飲んだね。あんまり飲みすぎて、翌日の撮影までヘロヘロになって、呂律が回らなくなったこともあります。本番のときのセリフが『ボス、大変です!』っていうのが、『ブス、大変です!』ってなっちゃう。NGくらってセリフを言い直すんだけど、やっぱりボスって発音できなくて、『ブス、大変です!』って繰り返してた」