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どこに行けばいいかわからない、そんなときの「総合診療科」

 ところが、医療側に治療法が用意されていても、患者は中々そこに行きつかない。

「こうした治療を行うのは心療内科や精神科です。一方の当人(患者)は、自分の症状を病気だと考えていない。吐き気や動悸などの症状を訴えてかかりつけ医を受診しても、身体的な異常は見つからないので、本質に迫る治療には結びつきにくい。幸運にもその医師がメンタルヘルスの受診を勧めても、当人に“心の病気”という意識がない上に、精神科の敷居の高さも手伝って、ことは容易に運ばないのです」

 そこで竹村医師が呼び掛けるのが「総合診療科」の利用だ。

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 総合診療科とは、縦割りの壁を取り払い、広範囲に何でも診る診療科のこと。医師不足の進む地方などでは初期診療から入院医療にもあたる一方、医療提供体制の充実した都市部では、「どこの科に行けばいいのかわからない患者」や、「どこの科が診ても対応がわからない患者」の受け入れ先としても機能する。

「総合診療科医であれば、内科が診る身体症状と、精神科が診る精神症状の双方にまたがった診断と治療が可能だし、必要があれば、より専門性の高い診療科への紹介もできます。最近では同様な機能を持つかかりつけ医も増えつつあります」

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 そんな“何でも診てくれる医師”がいるということを知っておくだけでも、精神的にはラクになれるかもしれない。

最悪の事態になるまえに……医師へ相談を

 社会不安障害が「性格」ではなく「病気」だということはわかった。しかし、本来は心療内科や精神科が診るべき病気となると、自殺の不安が生じてくる。

「社会不安障害単体の自殺率は1%と言われていますが、これに別の要因が重なると16%まではね上がるという報告がある。放置するのは危険です」

 竹村医師が言う“別の要因”とは、気分障害(うつ病など)、パニック(極度の興奮状態)、強迫性障害(あまり意味のないルールや決め事に固執して自分の行動を抑制してしまう)、身体化障害(病気ではないのに病気だと思い込む)、それにアルコールや薬物への依存など。

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 人前で喋ることで「死ぬほどの緊張」をしたとしても、その緊張で本当に死ぬことはない。

 しかし、その緊張の原因を見過ごすと、自殺に至る危険性があるとなれば、話は穏やかではなくなってくる。

 ちなみに、竹村医師によると、社会不安障害は圧倒的に20代に多く、年齢が上がるにつれて患者数は減っていくという。経験を重ね、社会に揉まれていくうちに、自然に鍛えられていくのかもしれない。

 であるならばなおのこと、最悪の結果を招く前に医療の手を借りて克服することを考えてもいいのではないだろうか。

 ほんわかとした書き出しだったのに、最後は妙に深刻な話になってしまいました。じつにどうも、赤面の至りです……。