結婚式の披露宴などで、大勢の聴衆を前に堂々たるスピーチをする人がいる。万雷の拍手を浴びながら満面の笑みで席に戻ってくる姿は政治家のようだ。そんな人に筆者は憧れる。
一方で、出席者が10人にも満たない内輪の会議でも、赤面して声は上ずり、結局何を言っているのかわからなくなって、上司から「もういい!」と言われてしどろもどろになる人もいる。そんな人に筆者は同情を禁じ得ない。気持ちがよくわかるのだ。
「そんなのは性格だから仕方ない」
と考える人もいるだろう。でも、もしかしたらこれ、病気なのかもしれない。
病気ならラッキーだ。なぜなら、性格は治せないけれど、病気なら治療法があるからだ。
紙を持つ手は震え、紙は汗で濡れ、声は消え入り……
IT企業に勤めるUさん(26)は、大勢の人がいる場所が大の苦手だ。
「いま自分は大勢の人の前にいる」
と思うだけで動悸が激しくなり、顔は紅潮し、頭や首筋や腋の下からは大量の汗が泉のごとく湧き出てくる。
人前にいるだけでそうなのだから、人前で喋るなどとんでもない話だ。会議で発言しなければならない時には、あらかじめ原稿を用意する。しかし、紙を持つ手は震え、紙は汗で濡れ、声は消え入り、結局「もういい!」となる。
問題は喋る時ばかりではない。結婚式や葬儀の時などの受付で記帳をするとき、ペンを持つ手は大きく震えて、読める字が書けない。
名刺交換の際も名刺が持つ手が大きく震えるので、相手は受け取るのに苦労する。
性格と決めつけるにはまだ早い、”アガリ症”
「親もアガリ症だったから仕方ない。親譲りの性格なんだ……」
Uさんは自嘲気味にそう話す。
しかし、そう決め付けるのはちょっと早いかもしれない。
「社会不安障害という病気かもしれません」
と語るのは、東京医科歯科大学医学部総合診療科教授の竹村洋典医師だ。
「これは“性格”ではなく心の病気なので、治療法があります」
詳しく聞いてみよう。