さらに追い風が吹いている事情
直通運転が始まれば、二俣川~新宿の所要時間は約44分になる。相鉄のほとんどの駅から、山手線内まで約1時間圏内になる。相鉄は都心通勤圏だ。
さらに相鉄には追い風が吹いている。2022年の「生産緑地指定期限」だ。
生産緑地とは、市街化区域のなかで営農を認められた土地だ。本来は市街化されるべき土地のため、宅地並みの不動産税がかかる。しかし、一代、または30年を限度として農地の存続を認めた。
生産緑地の多くが1991年に指定されており、2022年にはほぼ全ての生産緑地が指定解除となる。宅地並みに課税されるなら、農地を宅地にした上でアパートやマンションなど賃貸住宅にするか、いっそ売却しよう、という動きが一斉に起きる。したがって不動産の供給過多、大暴落が起きるという予測もあり、業界では「2022年問題」とも言われている。
ただし、生産緑地については国の考え方も変化している。災害避難場所の確保やヒートアイランド対策の観点から、住宅と農地の共存に舵を切った。法改正が行われ、生産緑地を「特定生産緑地」に再指定してもらうと、さらに10年間は期限を延ばせる。期限が来たらさらに10年、という具合だ。
だから、すべての農地がすぐに住宅になるわけではない。しかし、農地を持て余している地主たちが用途変更に動くきっかけになる。2022年問題は、家を買う、借りる側にとっては朗報だ。マイホームの夢が叶う。同じ予算でもっと広い家が手に入る。そして、都心から1時間圏内で、相鉄沿線は他の大手私鉄よりも農地が多い。
緑園都市駅が本来の使われ方をすると……
相鉄とJR東日本の直通運転、さらに2022年に東急電鉄との直通運転も開始すると、相鉄沿線の人口は急増するだろう。わたしの希望的予想では、つくばエクスプレスなみの成功パターンになりそうだ。すでにゆめが丘駅の駅前では、大規模な開発工事が再起動している。列車の増発は必至。所要時間短縮の要望も高まり、特急・急行の増発も行われる。
しかし線路設備がパンクしそうだ。
そんなとき、
「ふふふ、こんなこともあろうかと、追い越し設備は準備してあるんだぜ」
と、緑園都市駅の庭園展望台が注目される。
緑園都市駅が本来の使われ方をする。それが都心直通運転大成功の証となるだろう。
写真=杉山秀樹/文藝春秋