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こだわりのノート「ほぼ日手帳」と「超重要ノート」

――情報の整理にかんしていうと、「先生のこだわりのノートや筆記用具について教えてほしい」という質問も来ています。

楠木 昔はスケジュール帳と、アイデアなどを書くノートと2冊持ち歩いていたんですが、今はA5サイズくらいの「ほぼ日手帳」1冊だけです。日々の予定はもちろん、メモを書き込めるスペースも多いので、この手帳1冊で済みます。筆記具は、スケジュールのパートは予定が変更することもあるので、消せるボールペンを使っていますが、ノートのパートは万年筆で書きます。万年筆で書くとあとから読みやすいんですよね。それとは別に、僕が「超重要ノート」と呼んでいるノートがあります。それは、深く込み入った考えを言語化したり、図式化したりするノートで、持ち歩かずに職場のデスクの上に置いてあります。これは僕の所有物の中で最も大切なものです。

――メモの取り方のコツについてはいかがでしょうか。

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楠木 初めにキーワードだけをバーッと書いていき、後で書き足していきます。頭の回転のほうが文字を書く手のスピードよりも速いので、頭に追いつくためには断片的な単語しか書けないんですよ。とにかく単純に「忘れてしまわないように書く」というだけです。大きな字で、後から読みやすく、早くメモを取ることが重要です。

実際に使用している「ほぼ日手帳」

50代の質問「どうしたらメタ認知力を上げられる?」

――50代の方からのご質問です。「楠木先生はものごとを分析するさいの“メタ認知力”が素晴らしいと思っているのですが、どうやったら向上するのでしょうか」。

楠木 メタ認知力をどういう意味でおっしゃっているのか分かりませんが(笑)、それは言語的抽象化の作業に近いことだと思います。本にも書きましたが、自分の中の好き嫌いを明確にするうえで、私的な感覚を精緻に言語で突き詰めていくんです。たとえば僕はスポーツが嫌いです。みんなが楽しいというスポーツを自分はなぜ嫌いなんだろうと腑分けしていくと、「事前にルールが設定されている」ということに行きつく。しかも得点や記録といった数値が示されるから、当然、競争になる。こういう定量的・客観的な数字で互いの優劣を競うこと、つまり「ゲームによる競争」が自分は嫌いだと分かってくる。一方、自分が大好きな音楽には事前のルールがない……といったように抽象化していく作業は本能的に楽しいことです。少し時間的なゆとりがないとしにくいことかもしれませんが。

 実はこれは生活上、仕事や世の中をみるときも実利の大きな方法です。ある選択を前にしたとき、個別の断片に見えることでも自分の中で抽象化ができると、ものすごく実用的です。素早く本質的な判断ができるようになるからです。抽象化というのは言語化ですから、先程いったようにメモを取ることはもちろん助けとなります。

20代・結婚に迷う男性の質問「結婚の決め手は?」

――なるほど。人生における究極の選択といえば「結婚」ですが、20代の男性からこんな質問が来ています。「現在付き合っている女性と結婚したいとは思っていますが、いまいち決め手がありません。まさに結婚とは好き嫌いで決めるものだとは思うのですが、先生は何を決め手に結婚されましたか?」。

〈会場爆笑〉