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48歳・男性の悩み「遅いスタートになってしまった自分への焦り」

――同じような悩みで、こんな質問も来ています。「私は本当にやりたいことを見つけるのに時間がかかり、48歳の今からやっと自分の本質をビジネスで表現しようと考えていますが、この歳でまだ“つぼみ状態”の自分に焦りを感じます。遅いスタートから自分らしい仕事を構築する時に必要な視点を教えてください」。

楠木 「自分が好きなことは何なのか」というのは、終わりがない問いかけで、いつまでたっても本当のところは分かりません。ただ、それに日々近づいていくというのが生きていくことの面白さなんですよね。その辺にエイジングの醍醐味があるのではないでしょうか。歳を取ると、髪が減ったり体重が増えたり良くないこともありますが、僕はトータルで見ると「ビバ!エイジング」だと思っているんです。遅咲き、早咲きなんてあまり関係ない。それに、寿命が伸びた今、「80歳まで仕事をするぞ」と思う人にとっては40代後半でも遅くはないでしょう。お話しぶりですと、長いことお仕事をなさろうと考えておられるようですし、全然遅くないスタートではないでしょうか。

©山元茂樹/文藝春秋

 昨今は、50代前半で早期退職をして新しいビジネスを始めたり、60歳になってからセカンドキャリアで新しい働き方を探る人も増えました。そういう方からご相談されると、私はいつも「好きなようにしてください」と答えています。

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「仕事ではなにより好き嫌いが大切だ」とお伝えすると、時々相田みつを系の話と誤解されるんですね(笑)。「あなたはあなたのままでいいんですよ」「ナンバーワンよりオンリーワン」「人間だもの」みたいなソフトな話に誤解されるんですが、僕はそういう考え方は全く持っていません。注文がないことや金を払ってもらえないことは「仕事」として成立していない。新しい試みやセカンドキャリアが「仕事」になるかどうかは、自分ではなくて客が決めることです。若い人はそういう局面で傷ついたりするかもしれませんが、ある程度年齢を重ねた成熟した方であれば、やってみて注文が来ないようだったら「これは違うな」とお分かりになると思います。

 私も趣味でバンドをやっていますが、ライブをやってもお客が来ないんですよね。その理由は明確で、価値がないから(笑)。うちのバンドは純粋に趣味だから、こっちが気持ち良くなるためにお客さまを必要としている。だから我々はライブに来てくれる数少ないお客さまを「犠牲者の方々」と呼んでいます(笑)。とりあえずやってみれば顧客なり市場が「仕事」として成立するのかを判定してくれると思います。