ロボット手術のもっとも大きな問題点
ロボット手術のもっとも大きな問題点と専門医から指摘されているのが、動脈を傷つけて大出血を起したときの止血に時間がかかることです。腹腔鏡下手術やミニマム創内視鏡下手術なら、すぐに開腹をして止血することができます。しかし、ロボット手術はアームを抜いたり、装置自体を動かしたりするのに少し時間がかかります。いざと言うとき、このタイムラグのために、重大事故につながりかねないのです。
今のところ、国内の前立腺がん手術でこのような重大事故は報告されていないようです。しかし、ロボット手術の先進国である米国では、2000~2013年の14年間で144人の死亡事例、1391人の負傷事例があったと論文で報告されています。日本でもロボット手術の件数が増えてくると、このような問題が顕在化しないとも限りません。
ロボット手術は、腹腔鏡下手術に熟練した外科医なら習得が速いと言われています。ですからロボット手術を受けるとしても、前立腺がんの腹腔鏡下手術などの経験も豊富な泌尿器科医のいる医療機関で受けることをお勧めしたいと思います。
【決断2】術後に尿失禁、勃起障害のリスクも
前立腺がんの手術を受ける際に、もう一つ覚悟しておかなければならないことがあります。それは、術後に後遺症が起こるかもしれないことです。
代表的なのが「排尿障害」、すなわち「尿失禁」。2016年1月に前立腺がんのロボット手術を受けた、タレントの西川きよしさんも、術後に尿失禁の後遺症が残ったことを告白しています。西川さんは、読売新聞の記事で、次のように話しています。
「チョロチョロと出ていた尿が、前立腺を取ってしまうと、蛇口全開みたいに、ザーッと出てしまうんです」(読売新聞ヨミドクター「[タレント 西川きよしさん]前立腺がん(2)「まだまだ大黒柱」手術即断」2017年3月22日)
当初はおむつが必要なほどで、その後も、くしゃみなどをするとちょろっと漏れることがあるそうで、尿パッドをつけておられるそうです。