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「垂れ流しになっては、少なくとも社長業は廃業しなければならない」

 もう一つが、性機能障害(勃起障害)です。同じく、98年に前立腺がんの開腹手術を受けた読売新聞グループ本社代表取締役主筆の渡邉恒雄氏(ナベツネさん)が、著書『わが人生記 青春・政治・野球・大病』(中公新書ラクレ)で次のように書いています。

「一方私も『前立腺のかたわらを走る2本の性神経は切断して構いませんが、尿道括約筋だけは温存してください』とお願いしていた。性神経を取るとインポになる。が、私は70歳を過ぎ、本心、セックスなどというものは厄介で不必要だが、垂れ流しになっては、少なくとも社長業は廃業しなければならない」

「セックスは厄介で不必要」と書いたナベツネ ©文藝春秋

 宮本さんはまだ60代です。果たして、ナベツネさんのように「セックスなどというものは厄介で不必要」という境地になれるでしょうか。命と引き換えかもしれないとはいえ、男性にとっては大きな決断を迫られる問題だと言えるでしょう。

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【決断3】「放射線治療」を行うかどうか

 こうした後遺症を避けられるかもしれない治療法として、前立腺がんでは手術のほかに根治が期待できる治療法として、「放射線治療」があります。それには、体内に埋め込んだ針のような線源から放射線を当てる「小線源治療」(組織内照射)と、体外から放射線をあてる「外照射」があります。

 とくに近年では、IMRT(強度変調放射線治療)という、コンピューターを駆使することで腫瘍の形に合わせて精密に放射線を当てることができる技術が普及しました。これによって、かつては多かった放射線治療による直腸や膀胱からの出血といった副作用が減ったとされています。

 ただし、放射線治療にも前述の出血の他、頻尿、排尿痛が起こったり、数年後に性機能障害が起こったりする副作用があります。また、再発した場合は、放射線の影響で組織が固くなり、出血しやすくなるため、手術のリスクが高くなるとされています。

©iStock.com

 いずれにせよ、こうしたメリット・デメリットも考慮したうえで、治療法を選択する必要があると言えるでしょう。ちなみに、9日に全国がんセンター協議会が公表した「全がん協生存率調査」のデータ(2002~05年診断症例)を見ると、前立腺がんはステージIIでも10年生存率100%でした。

 宮本さんが納得のうえで最善の治療を受けられ、これからも素晴らしいミュージカルの演出を続けられることを心から期待しています。