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韓国の災害対策意識を変えた事件

 2017年、前大統領である朴槿恵が弾劾訴追によって罷免された後に行われた大統領選挙において、大きなイシューの1つが災害や事故への対応問題であった。その背景には2014年4月16日の「セウォル号沈没事故」がある。

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 セウォル号が沈没した際、政府の事故対応が大きな問題として世論を騒がせた。事故当日、朴大統領本人が7時間も職務室にいなかった事、救助に向かった海洋警察がまともに救助を行えなかった事、事故に対応すべき機関の連携が取れていなかった事などがメディアを通じて報道されると、朴政権に対する国民の非難は大きく広がった。やがてこの問題は朴政権への弾劾訴追の1つの理由にもなったのである。

「災害対策」は大統領選挙の争点に

 大統領選挙で勝った文在寅大統領は「国民の生命と安全を守る」と公約に掲げていた。具体的には、自然災害や社会的災難に対して青瓦台がコントロールタワーの役割を果たす事を明言し、またそのための関連法案を2018年までに可決させるとしたのである。

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 今回の山火事の対応はそれら対策の結果だと言える。2017年にそれまで行政安全部の下部組織だった消防庁を独立させた上で、大規模災害には管轄地域に関係なく出動できる指針を作っていた。そのため、中央災難安全対策本部が設置される前に全国の消防隊が出動できたのである。

 その結果、今回の山火事は規模も大きく被害地域も広大だったのに比べると、少ない被害で収まったのである。