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フランスの女性監督が放つ不穏で官能的なSFホラー

クレール・ドゥニ監督インタビュー

2019/04/19

genre : エンタメ, 映画

note

ジュリエット・ビノシュの不思議な魅力

――この映画におけるジュリエット・ビノシュの大胆で妖艶な演技にも驚かされました。ジュリエット・ビノシュという女優の一番の魅力とは何だと思われますか。

クレール・ドゥニ 前作『レット・ザ・サンシャイン・イン』を撮影していたある日、共演者のジェラール・ドパルデューが彼女に向かって、からかうように言っていました。「君はまた男の子みたいな格好をして」と。ジュリエットは不思議な人です。十分に年を重ねたのに、いつも子どものように遊びたがる。とても美しい人なのに、決して人を誘惑しようとはせず、ただ単に存在しようとする。でもそうした例外的なところこそ、彼女の魅力なのです。

 この映画のなかで、自分でもとても好きなシーンがあります。夜、ディブス医師が、元死刑囚たちを監視するために廊下をひとりで歩くシーンです。歩きながら彼女は独り言を言います。「あなたたち囚人のなかで一番重い罪をおかしたのは私。私が一番悪人だ」。まるでそのことが彼女にとって内的な喜びをもたらしているかのようです。彼女こそ最も悪である。だから彼女がリーダーなのです。

Claire Denis/1948年パリで生まれ、12歳までアフリカ各地で暮らす。87年、初監督作『ショコラ』がセザール賞にノミネート。『パリ、18区、夜。』(94年)はヴィム・ヴェンダースに「人生の最後に見る映画」と評される。96年、『ネネットとボニ』でロカルノ国際映画祭金豹賞受賞。

INFORMATION

『ハイ・ライフ』
4月19日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、ユナイテッド・シネマ豊洲ほか全国順次公開
http://www.transformer.co.jp/m/highlife/

フランスの女性監督が放つ不穏で官能的なSFホラー

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