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泣くたびに強くなる“口から生まれたサウスポー” 中日に大野雄大がいてよかった

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/05/01
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「自分のやってきたことを信じて投げればいい」

 自分を育ててくれた母親への恩を忘れない大野雄大は月に1回、ひとり親家庭の親子をナゴヤドームに招待し続けている。自分の登板がない日でも、試合後、子どもたちの前に現れて、次のように語りかけている。

「お母さんも大変な中、みんなのために頑張って、ご飯をつくったり、洗濯をしたり、いろいろなことをしています。だから、そんなときは一度でも『ありがとう』と声をかけられたらお母さんも嬉しいと思いますし、明日から頑張ろうという気になると思います。なので、照れくさいかもしれないけれど、『お母さん、いつもありがとう』と声をかけてあげてくださいね」

 大野雄大は気持ちを言葉にして伝えることの大切さをよく知っている。落ち込んだとき、まわりから温かい声をかけられて、そのたびに復活したからだ。だから、チームメイトたちとも壁をつくらず、積極的に声をかけあっている。

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大野雄大は気持ちを言葉にして伝えることの大切さをよく知っている ©文藝春秋

 同じく、言葉の大切さを知っているのが与田監督だ。シーズン前、与田監督は大野雄大にこう声をかけた。

「信頼しているから。自分のやってきたことを信じて投げればいい」

 与田監督の信頼に応えるかのように、今年の大野雄大は躍動している。お酒が大好きで酔っ払うたびに財布をなくしていた大野雄大が、今年は禁酒を宣言してシーズンに臨んでいることはよく知られている。

 平成最後の試合となった4月30日の巨人戦ではピンチで同じ年の坂本勇人を牛耳り、見事な勝利を挙げてみせた。マウンドに大野雄大が仁王立ちしている。こんなに心強いことはない。ドラゴンズに大野雄大がいてよかった。泣いたり笑ったりしてきた野球人生、シーズンの最後は歓喜のビールかけで泣き笑いしている大野雄大が見たい。

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