なぜ年間指定席を2席買っているのか
上村さんは市役所勤務をしている頃に福岡県飯塚市で少年野球チームを立ち上げた。15年間“穂波シャークス”を監督として率いた経験があるため、選手一人一人の心情を察する事もよくある。上村さんのような高齢者ファンには少年スポーツ指導経験者が多く、戦術とはまた違った目線でプロ野球をみるというのもヤフオクドームではよく耳にする。孫と同じ世代の選手達を野球人としての大きな愛情で包む心を持ちながら観戦しているというのが著者の印象だ。
しかしながらお金を払って観戦している以上、時に厳しいファンにもなる。年金の大きな部分をホークスに費やしているのだからホークスが劣性の時はふて腐れることも度々。勝負の世界だから仕方がないとはいえ、彼は勝つホークスとプロの野球が観たくて仕方がないのだ。そんな試合時には上村さんの指定席には既に誰も座っていない。著者は彼が試合途中で帰るような人間ではないというのも知っている。
そんな時は、上村さんの座席あたりからスタンド階段をずっと上ったところにある『居酒屋鷹正』で御機嫌斜めにブツクサ言いながら飲んでいる。こういう時でもヤフオクドーム内にしっかりお金を落としてくれるありがたいファンなのだ(笑)。この店には上村さんのキープボトルが4本もあるというから本当にありがたい。
上村さんの年間指定席の2席はいつも彼しか座っていない。そのことを訊ねると『母ちゃんが来ればいいと思って買うちょるけど、キツイって言って全然来んとたい』だそうだ。確かに上村さんの奥さんが座っているのは2度ほどしか見たことがない。
若かりし頃にダンスホールで名前を聞いて口説いた恋愛結婚の上村家も、時が経てばこういうものなのかもしれない(笑)。
上村さん、いつまでもお元気にホークスを応援し続けてください。そして、ふと思う。12球団のどこのチームでもいいから“年金受給者デー”というニッチなイベント試合を開催してくれたら、きっと長寿大国の記録が少し伸びるような気がする。その時配布されるユニホームはシルバーに違いない(笑)。
写真提供/加藤淳也
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