22日、ホークスのホーム試合は東京ドームで行われる。この巨大スタジアムが開業したのは昭和最後の年だった。若者たちは「ビッグエッグ」なんて別称は知っているのかな? 大きな卵……、見た目はたしかにと思う一方でなかなか思い切ったネーミングをしたものである。

 東京ドームには、学生時代の思い出が詰まっている。あの頃はまだ日本ハムが本拠地にしていたのでたくさんのホークス戦を観戦に行った。レフトスタンドへ一緒に足を運んでくれたのは、やはり同じ九州出身の友人が多かった。つい方言が戻る。するとある時、後ろの列のサラリーマン風のおじさんから「兄ちゃん、どこね?」と声をかけられた。「熊本です」。すると「そうね!」と嬉しそうに、ビールを1杯奢ってもらった。

 野球場で飲むビールって、自分へのご褒美のような少し贅沢気分になれる。あの喉越し、本当にたまらない。だけど、大学卒業以来、僕にとって野球場は職場に変わった。以前、メジャーリーグの取材に行った際には試合後の記者席にビールとピザが運ばれてきて、向こうの記者たち瓶を傾けてグビグビやりながら原稿を書いていたから驚いたが、日本ではそうはいかない。

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 だけど、やっぱり野球場のスタンドに座ってビールを飲みたい! それが東京なのだ。たまの出張が決まるとプロ野球日程をすかさずチェック。そこはホークスが絡まないカードを探す。だってプライベート気分に浸りたいから。

 目標は毎年1試合。なかなか思うようにいかない年もあるが、昨年はメットライフドームで西武対ロッテをふつうにスタンドで観戦した。夏真っ盛りでとんでもなく暑かったが、だからこそ紙コップの中の黄金色が本当に輝いて見えたものだ。

ヤフオクドームのビール売上を伸ばした“仕掛け”

 というわけで、コラムテーマ「東京」で真っ先に連想したのがビールだったが、世の中では「ビール離れ」が進んでいるらしい。今年1月にビール王手5社が発表した総出荷量は14年連続で減少となり、1992年の公表開始以来の最低を更新したという。たしかに飲み会の席でも「とりあえずビール」は通用しなくなっている。

 だがしかし、このご時世の中でビールの売上を右肩上がりで上昇させ、しかもこの5年で売上杯数を1.5倍にしたのが、ホークスなのをご存知だろうか。

 ヤフオクドームにおけるビール売上杯数は2014年が645,161杯だった。これが年々上昇して2018年には959,957杯を記録。今シーズンは100万杯超を視野に入れているという。

 もちろん“仕掛け”がいくつかあるが、やはり近年注目を高めた「売り子さん」の存在が大きい。売り子販売数がとにかくもの凄い上昇曲線を描いているのだ。ホークスは売り子のブランディング化にいち早く手をつけ、それを成功させた代表的な球団である。手始めに球団公式サイト内に売り子たちの名鑑を登場させた(ちなみに男性もおります)。そして最も大胆な策が2016年に「売り子カード」を誕生させたことだった。

2016年に誕生した「売り子カード」 ©田尻耕太郎

 このカードはビール回数券を購入すれば、特典で1枚ついてくるというシロモノ。ヤフオクドームは1杯700円(一部750円の商品もあり)。回数券は10枚綴りで7,000円となっている。ん?? こういう場合って11枚じゃないの、と思うけど、球団の自信の表れなのか。ただ、たしかに売り子さんたちは美人揃いでカードのクオリティもかなり高い。

 今回、当コラムのために2人の売り子さんに協力してもらい撮影などをしたのだが、しほさん(アサヒビール)は2年目にしてすでにエース格で、一日最高280杯を売り上げたことがあるという。一方、みさきさん(キリンビール)は4年目の今季開幕戦でキャリアハイの300杯を記録したそうだ。ナイターの場合、開場の15時半からスタンドを縦横無尽に歩き回り、それが21時すぎまで続くという。「自主トレもしています。シーズン前は天神に出掛けたら、数時間かけて家まで歩いて帰ることも(!)」という驚きのエピソードも明かしてくれた。

売り子のしほさん(アサヒビール)とみさきさん(キリンビール) ©田尻耕太郎

 そんなヤフオクドームではビールは飲めないのが残念で仕方ないが、我らがヤフオクドームはビールだけでなく実はグルメが凄い!