月間再生回数は4億回。ネイル、メイク、ファッションから料理レシピ、恋愛までを網羅する女性向け動画配信メディアC CHANNELを設立したのが社長の森川亮さんです。LINEの社長を退いて動画サービス経営へ転身をはかった森川さん。どうして動画でいけると思ったのか? なぜ女の子メディアに絞ったのか? ビジネスのヒントをたくさん伝授してくださいました。

 

どうしてLINEを退社したのか

――まずお聞きしたいのは、なぜLINE株式会社を退社しなければならなかったのか、ということなんです。LINEは言うまでもなく若い女性の利用率が高く、C CHANNELを始めるにしても社内事業としてLINEとの連携を考えるのが自然にも思えるのですが。

「日本を元気にしたい」というのがLINEを退社した最大の動機なんです。LINEはもともとハンゲームという韓国企業の日本法人として設立され、NHN Japanに商号変更し、買収したライブドアや検索事業のネイバージャパンと経営統合してできた会社で、外国人の社員も多く在籍しています。世界中で仕事をしていると、相対的に日本人が元気がないという印象があったんです。

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 かといって、LINEの中で「日本人を元気にしたい」と言えばそれはただの差別です。根本的に日本人を元気にする仕組みを作るには、会社の外に出るしかない。そこで代表取締役社長を退いて、退社したんです。しばらくはLINEの顧問も続けていましたが、今は顧問からも退きました。

――「日本を元気に」するためには、何が必要だと考えたのでしょう?

 問題はそこなんですよね。ほかのテーマもいろいろ考えました。教育、ヘルスケア、エネルギー、農業……そんな課題解決のアイデアを考えていたんですけど、重すぎるし、僕は教育の専門家でもないし、と。そこでメディアに着目しました。

 とはいえ、いきなり全世代に向けたメディアを始めるのは難しい。そこで「女子」にフォーカスしたんです。とくに日本は女性が活躍できる場が少ない。活躍したい女子を集めて世界に発信すれば女性が元気になるし、それを見た男性もきっと元気になる(笑)。そういう発想です。

 

――メイクや三つ編みの動画の向こうに大きな目標があるのですね。

 僕が若い女性が好きだから、こんなことをやっていると思われがちなんですけど、別にそういうことじゃないんです。そこはきっちり書いていただければ嬉しい(笑)。ただ、おじさんばっかり出る動画メディアはおじさんも見ませんが、若い女性が出てればおじさんも見る(笑)。それが本質かなと思います。

――世界に発信しないと日本が元気にならない、という確信があると。

 アジアのエンターテイメント市場は、ほとんどは韓流に席巻されてしまっています。ドラマのなかのイケメン俳優がサムスンのテレビを使っていれば、若い人もサムスンを使いたくなる。ソニーの凋落はそこに根本があるんだと思います。エンターテイメントは文化的な産業戦略なんですね。

――トレンディドラマも家電を売る装置として機能していたということですね。最近は、昔でいえばトレンディドラマの俳優たちがCMで第3のビールを家飲みしています。経済状況に対応したマーケティングなのでしょうが、あまり元気にはならない光景ですね。

 はい。それに高齢化で多くのコンテンツも中高年層をターゲットにせざるを得なくなっていますから、それを海外にそのまま持っていっても商売になりにくいんです。アジアの若い人を取りにいかないといけなくて、そのためのプラットフォームを作りたいという思いがあります。

――そのためには若い女性の文化を相当勉強しないといけませんね。

 女性たちにインタビューもしましたし、ファッション雑誌も読み込みました。でもそれでわかるかというと、わからない。メイクのしかたもだいぶ学びましたし、用語もずいぶん覚えましたが、カワイイかカワイクないかといわれると、正直わからないです(笑)。