ユーザーの7割が実践する動画
――女の子に受けいれられる動画って、どういうものなんでしょうか。
まだまだ試行錯誤の途中です。誤解を招きそうな言い方ですが、きれいな女の子は、喜んでくれる女性も多いけど、反面、嫉妬を招きやすいんです。ひどいコメントがたくさんついたりする。なので、メイクの動画は女の子が出ないとどうにもなりませんが、ヘアはマネキンでやっていることもありました。
――なるほど……。
メイクは、きれいな人ははじめからきれいなので、受けない。ある程度は等身大で、頑張れば手が届くような女の子でないといけない。「きれいすぎる」の線引きは難しくて、二次元キャラの「萌え」判定のようなものです。ゲーム事業をやっていた頃は詳しい人を集めて判定してもらっていましたが、今はインフルエンサーマーケティングの子会社を作って、そこで日々セレクションをしています。
――最初は社内で全部やっていたんですか?
立ち上げて半年くらいはさんざん悩みましたね。スタッフは男ばっかりだったので、「きれい」のロジックツリーを作って分析したりしたんですけど、途中からこれはロジックじゃないんだなと諦めました。
ちょっと胸元が開きすぎていたり、高いバッグを持っているのもダメなんです。「久兵衛でお寿司食べました~」とか言っちゃう子もダメで、スタバくらいがちょうどいい(笑)。ちょっと頑張ればなんとかなる、がいいんでしょうね。高すぎる目標が疎まれるお国柄を感じます。
――共感メディアでないとダメなんですね。
動画を投稿して、ユーザーからコメントがついて、それに返事して、また返事が来る。コミュニケーションが発生すると強いんですね。C CHANNELを作ってみてそれを痛感しました。
――芸能事務所やモデルエージェンシーからのクリッパーの売り込みを、断ることが多いとか。
男性受けばかりする人はまずいんですよね。グラビアアイドルとか、つい吸い寄せられそうになりますけど(笑)お断りしています。クリッパーの入れ替わりも多くて、続かない人もいれば、向いてそうで向いてなかった人もいたりと、人数はあまり増減しないんですよね。最近伸びているのが専門性を持っている子で、料理が得意だったりメイクが得意だったり、プロのネイリストのクリッパーもいます。女の子もおしゃれだけではダメで、専門家であることが求められていますね。
――この取材のために三つ編みの動画を見て、生まれて初めて三つ編みの生成過程を知りましたが(笑)、実際には1分ではできないですよね。
長いものも、テンポが遅いものも見られないんです。むしろ早送りで、あっという間に終わるように見せたほうがいいんですね。BGMもアップテンポがいいようです。ヘアの動画は見たユーザーの7割が実践しています。
――どんな動画が人気あるのでしょうか?
国によってかなり違いますね。C CHANNELは日本、韓国、中国、台湾、タイ、インドネシア、2017年初頭からはシンガポール、マレーシア、フィリピン、ベトナムあとは英語圏に向けて配信しますが、中国でプリン動画がヒットしたり、アイルランドでネイル動画が受けたりするんですよね。
ヘアやメイクは当然、髪や肌の色によっても事情が変わってくるので、なかなかブレイクしにくいんです。ネイルや料理は比較的どこでも受けいれられますが、インドネシアでは食べられない食材があったりもします。オリジナルコンテンツは台湾とタイ、これからインドネシアと韓国でも作られることになっていますが、各地の担当とうちの編成が定期的にテレビ会議でアイデアを出し合っています。
もりかわ・あきら 1967年神奈川県生まれ。筑波大学卒業後、日本テレビに入社。コンピューターシステム部門でネット広告や映像配信など新規事業に関わる。退社後、ソニーを経て、ハンゲームジャパン(現LINE)に入社。2007年に同社代表取締役社長に就任。15年にC Channelを設立、株式会社代表取締役社長になる。著書に『シンプルに考える』『ダントツにすごい人になる』など。
写真=深野未季/文藝春秋