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文在寅氏の“部下”が騒ぎ出した

 国会の教育文化体育観光委員会に所属する、当時は野党だった民主党(現・共に民主党)の金相姫(キムサンヒ)議員が、「文化財庁は文化財保護法に違反し、日本側に特恵を提供していた。さらにその過程で“外圧”がかかった疑惑がある!」と騒ぎ出して、着工を阻止しようとしたのである。

金相姫議員(本人のHPより)

 金議員の言う“外圧”とは一体何なのか。彼女が“疑惑の証拠”として取り上げたのは、「日本大使館から文化財庁に送られた公文」と「韓国外交部から文化財庁に送られた公文」だった。

 実はこの時期、日本にある韓国大使館も新築工事の計画を立てていた。そこで、日本大使館は2012年12月21日、「日本政府は駐日本大韓民国大使館事務所の新築計画に関して便宜を提供したのですから、本計画(日本大使館の新築計画)が再申請で否決になった場合、日韓関係に悪影響を及ぼす可能性があると考えております」と懸念を表明する公文を発送していたのだ。

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 これに絡み、韓国の外交部も2013年5月2日、文化財庁に次のような公文を送っている。

「(新築許可は)文化財庁の許可事項として貴部の裁量的判断が可能なことだと把握しています。(略)ポジティブな再考を要請するので、これに対して結果を5カ月以内に外交部まで伝えるようお願いします」

 日本大使館からの公文も、外交部の公文も、日韓外交が円滑に進むよう配慮した極めて妥当なものだと言える。しかし、金議員はこの2通の公文を引き合いに出して、「2012年に一度は否決された結果が裏返ったのは、日本大使館側と外交部の“外圧”があったからであり、徹底した調査が必要だ!」と糾弾したのだった。「日本大使館の新築=悪」と決めつけた上での“揚げ足取り”でしかない言動だが、これによって新築計画は遅延した。ちなみに、金議員は現在、文在寅政権下の与党議員として、低出産高齢社会委員会副委員長などの役職に就いている。

 結局、鍾路区庁から最終的な建築許可が下りたのは、それから2年後の2015年。だが、そこでトドメとなる“ブレーキ”がかけられた。

今度は遺跡発見で「工事延期」

 2015年7月、日本大使館はすべての機能を隣接するオフィスビルに移転した。ようやく旧大使館の取り壊しが行われることになったのだが、ここで、建築許可の「条件」が発動する。取り壊し後、跡地で発掘調査をするというものだ。

 すると、2016年1月、跡地から李氏朝鮮時代の遺構らしきものが見つかった。「日本大使館の跡地から歴史的遺構が出土した」のニュースに韓国メディアは狂喜し、「すわ文化財発見か!」と連日のように報道がなされた。万が一、文化財となるような重大な史跡が発見されれば、日本大使館の新築工事自体、無くなる可能性が高い。しかし、熱が入った「文化財キャンペーン」もむなしく、結局、重要な遺跡は見つからず、2016年4月に発掘調査は打ち切られた。

 そこから今日に至るまで、跡地は空き地のままである。

 韓国側は、文化財保護法違反などを口実に、日本大使館の新築工事を阻害してきた。だが、明確な国際法違反である日本大使館前に設置された慰安婦少女像には今でも目を背け続けている。日本大使館が建築申請をしていない背景には、そのような事実があることを忘れてはならない。

 前出の朝鮮日報の記事では、現在の状況について次のような指摘がある。

〈「韓日関係は1965年の韓日国交正常化直後の状況に戻ってしまった」という声も出ている。当時の日本大使館は現在ロッテホテルがあるソウル市中区小公洞にかつてあった半島ホテルの5階に入居していた〉

 言うまでもなく、外交上の起点として大使館の存在は重要である。その場所が今、フェンスに覆われて雑草が生い茂って放置されている状態だというのは、最悪と言われる現在の日韓関係の写し鏡のように思えてならない。

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 現在発売中の『文藝春秋』5月号には、元外務官僚・元外務副大臣の城内実氏(現・環境副大臣)による「韓国には『報復』と『謝罪要求』を」が掲載されている。暴走する韓国とはどう付き合うべきか――“知韓派”として知られる城内氏が分析している。