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韓国・ソウルの日本大使館を「新築建て替え断念」に追い込んだ“3つの嫌がらせ”

「新築計画」を諦め、空き地に雑草が生い茂るまでに何が起こったのか

周囲は高層ビルなのに、日本大使館だけ「高さ制限」

 前出の朝鮮日報の記事では、日本大使館の新築工事に関して、〈2013年から進めてきた〉〈日本政府が大使館を新築するという考えを(ソウル市)鍾路区庁に正式に伝達したのは2013年7月のことだった〉と「2013年に始まったこと」がことさら強調されているが、実は、日本側が初めて新築工事を申請したのは2012年6月である。

 当初、日本大使館は、地下1階・地上5階建(高さ23.45メートル)の旧大使館を、地下3階・地上6階建(高さ35.80メートル)に建て替える計画を立てていた。管轄はソウル市鍾路区だが、新たな建物を建築するには文化財保護を管轄する文化財庁の許可が必要となる。そこで日本側は文化財庁に新築計画を申請した。しかし、この時点では建築許可が下りなかった。文化財庁が「現地調査後に再検討」と保留にしたからだ。

 現地調査を経て、1カ月後、再審議が行われた。その結果は、なんと否決。「新築工事はしてはならない」という判断が下されたのだ。次のような理由が提示された。

「(日本大使館の新築は)景福宮(キョンボックン)の歴史文化環境を毀損する憂慮がある」

 景福宮とは、李氏朝鮮時代の王宮で、ソウルの中心地・光化門(クヮンファムン)のすぐ後ろに位置する人気の観光名所である。文化財庁は、「景福宮から100メートル以内の距離は文化財区域。日本大使館はその中にある。文化財区域内の高さ制限は14メートル。日本大使館の新築案は2倍以上の高さがあるので否決とする」と説明した。

 ところが、日本大使館の周囲を見渡す限り、20階近くはある高層ビルだらけである。日本側は「いやいや、周囲にビルがあるじゃないですか。なんでウチだけ駄目なんですか」と抗議したが、こう突っぱねられた。

手前が日本大使館の跡地。周囲は高層ビルだらけ ©文藝春秋

「景福宮周辺の具体的な高さ規定が定められたのは2010年。これらのビルはそれ以前に建てられたものであるから(高さ制限に)該当しない」

 旧大使館の高さでさえ、23.45メートル。にもかかわらず、新たな高さ制限を根拠として、「14メートル以上は許可しない」というのは、実質的に「新築工事をさせない」と言っているようなもの。これが最初の“嫌がらせ”である。

 だが、日本側は諦めなかった。それから1年後の2013年6月、高さを32.40メートルと低く修正した新築案を文化財庁に再申請した。そこでも再び「保留」となったが、翌7月になり、ようやく建築許可が下りることとなった。ただし、「旧大使館の建物取り壊し後、地域の発掘調査を実施する」という条件付きだった。

 これで無事、日本大使館の新築工事は始まるはずだった。ところが、さらに次の“イチャモン”が付けられた。