日韓問題の火種は尽きることがない。徴用工訴訟をはじめとする諸問題に解決の兆しが見えない中、今度は、昨年12月に起こった「自衛隊哨戒機レーダー照射事件」の“第2ラウンド”が始まった。
きっかけは4月22日の読売新聞の報道だった。レーダー照射事件が起きた直後の今年1月、韓国の国防部は日本の防衛省に対し、「韓国海軍艦艇から3カイリ(約5・5キロメートル)以内に入った軍用機には射撃用の火器管制レーダーの照射を警告する」という“韓国軍の新指針”を通達。これについて日本と韓国は4月10日にソウルで非公式協議を実施し、日本が「新指針の撤回」を要求するも、韓国は「指針に問題はない」と応じなかった――というのがその内容である。
読売新聞の報道を受けた国防部は当初、「事実無根だ。マニュアル(指針)を日本側に通達したことはない」と説明した。しかし、直後に一転。「マニュアルは通知していないが、1月に日本側に軍事的基調と措置を説明する際、3カイリに言及して軍の強力な対応意志を表明した」「説明に混乱を招いた点を謝罪する」などと釈明するに至った。議論は「言った」「言わない」の水掛け論となり、自衛隊と韓国軍の溝は、いっそう深まってしまった。
2017年5月に文在寅(ムンジェイン)政権が発足して以降、怒涛のように押し寄せてくる日韓の諸問題。長嶺安政・駐韓大使以下、現地の日本大使館で働くメンバーは心休まる暇もなく、日々、忙殺されている。また、彼らは韓国の“嫌がらせ”を長年、受け続けてきた。ソウルの日本大使館は最も大変かつ厄介な在外公館と言っても過言ではない。