■中学3年生(2012~13)
「『これが跳べたらいい勝負ができる』っていう、しっかりした武器が欲しい。そのためにはやっぱり、ジャンプ。トリプルアクセルは降りたいな、って今必死に練習してるところです」
世界ジュニアの空気を知った昌磨はトリプルアクセルの練習に力を入れていた。
だが取材する側からすると、昌磨の持ち味は、なんといっても音楽表現。身体が音楽そのもののようなしなやかさ、瑞々しさで、四肢をいっぱいに使って見事にひとつの作品を作り上げる力。小さくても氷上に花が咲くような、目の離せない存在感。でも自らの「踊る」才能について昌磨は謙遜する。
「陸上の踊りの練習は、何をやっても好きになれません。僕はダンスなんて、氷上じゃなければ何もできないんです。みんなに『踊れてるよ』って言ってもらえるのは、たぶん美穂子先生が僕に合わせて、僕の得意な振り付けだけでプログラムを作ってくれるからですよ!
本当は僕、できない振り付けがすごく多い。ちょっと変わったポーズを取ると、すごく変な形になるんです。でも、そういう箇所は先生がすぐに抜いて、違う振り付けに変えてくれます」
一般的なスケーターは、国際レベルで戦うようになると、国内外の専門的な振付師の元でプログラムを制作する。だが昌磨の場合、樋口コーチが振り付けもすることで、個性的なプログラムが作られていた。
この年、昌磨は目標にしていたジュニアグランプリファイナル進出はならず、2度目の全日本選手権での健闘もむなしく(11位)、世界ジュニア代表入りも逃した。ところが、代表に選ばれていた田中刑事が負傷。補欠の昌磨の出場が決定する。
そして2月、ミラノでの本番。トリプルアクセルこそないものの、フリーをほぼパーフェクトに滑り、観客は大喜び。世界のスケート関係者の昌磨への注目は一気に高まった。
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記事全文と、オンライン未掲載のカラーグラビアは4月26日(金)発売の「週刊文春WOMAN」(vol.2 2019GW号)にて掲載中。