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「日本に捨てられ、韓国に救われた」就職氷河期世代の私――ある団塊ジュニアの見た平成

2019/04/29
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ひきこもりだった私が韓国で職を見つけるまで

 内閣府が3月29日に公表した、40~64歳の「ひきこもり中高年者」。その数は推計約61万3000人に上るという。厚生労働大臣が「新しい社会的問題だ」と発言したというが、私は、どの辺りが新しいのか分からなかった。要するに、厚生労働省など政府の中央機関に勤める人々のほとんどは一流大学を出たエリートな上、組織を統べる役職にいる人々は、大体バブル期以前に大学を出ている。彼らはスムーズにレールの上を滑り歩いてきたため、ひきこもり中高年者という、一見弱者とは分かりにくい人々に目を向けるのが遅くなったのではないだろうか。

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 私は、大学院在学中に就職が見つからなかったので、修士課程を終えてから職安に行ってみたものの、初っ端から職員に「残念な大学を出ているし、女性で年齢も既に24歳。アルバイトを見つけるのすら難しい」という屈辱的な言葉を投げかけられてしまった。この一言がきっかけで落ち込んでいた気持ちに拍車がかかり、本格的なうつ病になってしまった。そして約2年間、たまに精神科へ行って薬をもらう以外は自宅から一歩も出ない引きこもりの生活を送った。

 その期間の記憶は曖昧で、何をしていたのかよく覚えていない。親きょうだいには冷たい目で見られ、友達とも縁が切れ、ほとんど眠っていたような気がする。身長162センチで、体重は30キロ台に激減した。就職できない。家では邪魔者。恋人も友人もいない。自死を考えたが、命が絶たれるまでに味わうであろう苦しみに恐怖を感じ、それには至らなかった。引きこもってから2年後、一旦自殺を諦めることにしたら、鬱が突然躁へと変わった。そして、なんとか金を掻き集め、電光石火の速さで韓国のソウルへ飛んで、日本語教師の職を見つけ、移住を決めたのだった。

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 タレントの北野武が何かの本で「外国に移住して1から始めるのは、自殺と同じようなものだ」という趣旨のことを言っていたが、当時の私はまさにその状況だった。自殺はできなさそうだし、そのエネルギーがあるなら外国へ行こう。もしそこで失敗したら、潔く死のう。では、どの外国がいいか。日本に近い国といえば韓国だ。ソウルなら外国語学校も多いし、その当時は日韓関係も悪くない時期だったため、日本語教師の職が見つかるかもしれない。そう思ったのだった。国民総学歴マニアで、先進国が大好きな韓国は、日本の大学の修士号と中・高の教員免許を持っている私をあっさりと受け入れてくれた。