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「つぶすつもりで来てください」「AKBは壊しません!」

 2012年の第4回では、5位にランクインした篠田麻里子が、後輩メンバーに対し「つぶすつもりで来てください」と発破をかけた。これは「後輩に席を譲れと言う方もいるかもしれません。でも席を譲らないと上に行けないメンバーはAKBでは勝てないと思います」との言葉に続けてのものだった。篠田は翌年、第5回総選挙の開票イベントで卒業を発表する。このとき1位になったのは、前年にAKB48から福岡を拠点とする姉妹グループ・HKT48に移籍した指原莉乃だった。大島や篠田ら「神7」と呼ばれたメンバーを押さえてトップに立ったことに、指原は戸惑いながらも「わたしがセンターになったらAKBは壊れる、とか言われてますけど、AKBは壊しません!」と約束した。その言葉どおり、指原はその後、グループを壊すどころか、先月末に卒業するまでAKB48グループを牽引する役割を担うことになる。

 こうして振り返ると、選抜総選挙で記憶に残るスピーチには、個人のスタンドプレイというより、むしろグループ全体を考えたうえでの言葉が多いことに気づかされる。これは、個人より集団を重んじるという意味で、きわめて日本的な傾向と見ることもできるかもしれない。AKB48の人気に陰りが見えるなか開催された昨年、第10回の総選挙でも、ランクインしたメンバーからは、グループの再起のため貢献したいというスピーチがあいついだ。

初代神7は2017年に渡辺麻友が卒業し、全員がAKB48としての活動を終了した ©文藝春秋

NGT48問題 グループの維持そのものが目的になると危うい

 グループに所属するアイドルにとって、グループに貢献しようとする努力が、個人としてのステップへとつながることも当然あるだろう。しかし、グループの維持そのものが目的になると危うい。場合によっては、それがメンバーを押しつぶすこともありうる。今年に入り、新潟のNGT48で山口真帆への暴行事件が発覚して以降の一連の動きは、それが現実のものになってしまったケースといえる。

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 事件については発覚後、NGTの運営側に批判が集まるなか、第三者委員会により調査が行なわれたものの、その報告内容は山口の言い分とことごとく食い違った。結局、運営側と平行線をたどったまま、山口は4月21日の劇場公演で卒業を発表する。このときの「何をしても不問なグループに、私がアイドルをできる居場所はなくなってしまいました」という言葉には、やるせなさを覚える。運営側は、山口個人を守ることよりも、グループの温存を優先したのだと批判されても文句は言えないだろう。

暴行被害に遭ったNGT48山口真帆は3カ月ぶりのステージで卒業を発表した